ブランド服を見るのは大好きだけれど、でも買う気はない。そもそも着てゆく服もない。さて、どうするか?

たとえば新宿で映画を観た帰りなんかに、伊勢丹メンズ館のショップを巡回するのはぼくにとって楽しい。衣服に対するちょっとした驚きがあるし、それぞれのブランドの想定顧客の違いも透けて見える。さらには、こんなめちゃめちゃ奇抜な服をいったい誰が買って着るかしらん、と驚かされるのもまた楽しい。



とはいえ、ぼくにはギャルソンの創造性あふれるシャツに5万円払うとか、ましてやバレンシアガの化け物じみたスニーカーのために7万円だの20万円だの蕩尽して遊ぶような粋狂な趣味も財力もない。すなわちぼくは伊勢丹を入場料無料の美術館として利用している。


そもそもぼくの普段着は古着、ユニクロ、ワークウェアの組み合わせゆえ、どうがんばっても伊勢丹メンズ館の客には見えない。(伊勢丹の常連客は、見るからに伊勢丹好きの恰好をしていて、全身50万円~百万円あたりまえである。)他方、ぼくは(眼鏡を除けば)全身1万円以下が標準設定である。とうぜんぼくに対する店員たちの視線も冷淡になるほかない。だって店員は店頭に立って仕事をしているのだから、買う気もない貧乏人と世間話をしている暇はない。


ぼくにしても、ただ新作を見て楽しみたいだけなのだから、勝手に見ればいいようなものの、しかし、あまりにもあからさまに「招かれざる客」を貫き通すことも気疲れするもの。


さて、そこでぼくが考案した着こなしは次のようなもの。黒のベレーをかぶって、セルフレームの眼鏡をかけ、白のツナギを着て、カラフルなインドスカーフを首に巻いて、腕にはネパール製バングル、派手めのスニーカーを履く。この着こなしは重宝で、なぜかいかにもデザイナーかアーティストというふうに見える。ツナギなのに! これなら伊勢丹メンズ館だろうが銀座six だろうがどこだってへっちゃらである。このテの裏技的かつモードもどきの着こなしを他にも持ちたいものだ。なにかアイディアをお持ちな人は教えてください。(着物は抜きで。)



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