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二億斉藤 #二億斉藤 #毎週ショートショートnote #ショートショート

『二億斉藤で間違えじゃないんだな?』
スマホから響く声が冷たいコンクリートの倉庫内に響く。
「はい。確認とれました」

兄貴の声が少し震えているのがこちらにも伝わる。俺の隣の奴に、二億の懸賞金がかかってる。
まだ5月。
ずぶ濡れになった状態の斉藤は小刻みに震えている。殴られた跡が痛々しく見ているこちらの方が辛い。

見張っておけと言われたが斉藤の足首は本体と離れてしまわないか不安な程無残な形だ。

早く回収班が来てくれないかと願いながら、スマホを確認するが、連絡は来ていない。

「……なぁ」
小さくボソッと聞こえる斉藤の声。
まだ喋れるのかよ……すげぇ。
「あんだよ。話しかけんなよ」

そう言って斉藤を見ると
さっきまで離れかけていた足首は、しっかりともとの位置な戻っている。
きつくステンレス製の結束バンドで巻かれ青紫色だった手首も俺より健康な色をしている。
なんでだよ。
小刻みに震えたのは俺の方だった。

これは、十億斉藤がまだ二億だった頃の話である。


【410文字】

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