原作より男性がイケメンの『あなたがしてくれなくても』
フジテレビの木曜22時から『あなたがしてくれなくても』が始まった。
これって『silent』の枠ですね。
(最終回まで見た『silent』についてもnoteで書きたいと思っています。また今度)
以前『silent』について書いた記事はこちら。
連載初期から原作漫画を追いかけてきた身としては、遂に始まったかという感じである。
セックスレスというテーマはお茶の間には馴染まないものの、とてもドラマ化しやすい設定だと思っていたので。
(以下、原作のネタバレあり)
ドラマの第1回を見てみた。
多分、原作を読んだことがある人は、
新名さん、イケメンすぎ!(笑)
と思ったよね。
だって岩田剛典だもん。
決して原作の新名さんがイケメンじゃないわけではないのだが、原作ではどちらかと言うとジワジワ来るタイプのイケメンである。ジワるイケメン。
普段は物静かで人当たりよく、そんなに目立つ人ではないけれど、よく見ると綺麗な顔立ちで、実は仕事もできる。
しかも料理も得意で、忙しい妻の代わりに家事全般をこなしている、いわゆる「真のイケメン」である。
原作では、みちのいる会社を辞めて「三輪商事」に転職が決まっており、周りから「すごいじゃん」と言われている。(三菱商事的な?)
プライベートの悩みに気を取られて、クライアントとの約束をすっぽかした時も、同僚に「オマエがミスするなんて珍しいな」と言われている。
つまり、そういう真面目で優しくて、でも出しゃばることのない、ある意味「理想的な夫」として描かれている。
ところが、ドラマの新名さんはなんたって岩田剛典だし、会社の役職は副部長で、部署を率いている感じ満々。部下への気配りも満点で仕事もできるし、自信に満ち溢れている。
その彼がセックスレスというのが、にわかには信じがたいが、どうやらそういうことらしい。
原作のどちらかと言うとオス度低めな新名さんが、キラキラバリキャリ美女である妻に侮られているのはとてもリアルだったが、これがドラマでは岩田剛典なのですよ?(しつこい)
妻役の田中みな実は、いかにも「仕事をしていると満たされる」というセリフが似合う女性雑誌の副編集長がピッタリはまっている。
ただ、残念ながら彼女はアナウンサーの割には声が細い。
なので、今後あるだろう夫婦の言い争いのシーンでは、キャンキャンヒステリーを起こしているように聞こえてしまいそうで心配だ。
原作の新名妻はどちらかと言うと大人で、落ち着いている雰囲気で、だからこそ甘えられないという一面を持っているのだが、果たしてドラマでは、そのギャップをどう描くのだろうか。
対する奈緒演じるみち夫妻も原作とはちょっとキャラが違う。
なんと言っても瑛太改め永山瑛太!
あんなに男の色気を家の中で放出しておいてセックスレスとか、それだけでもう有罪だろ、有罪。
さとうほなみ演じる三島とも、あっという間に浮気しそうである。
新名役の岩田剛典もそうなのだが、原作よりも男性キャラが総じてイケメンである。
その分、ハーレクイン的な夢の世界に浸りやすいとも言えるし、セックスレスというテーマがどこか絵空事で、ドラマを盛り上げるための「道具」に堕してしまう危険性がある。
このドラマは、あの『昼顔』のチームが再集結して制作しているらしいが、確かによく似ていると言えば似ている。
だから、リアリズムに徹して日常が少しずつ描かれる原作とは違って、思いきって絵空事に振り切ってしまった方がエンタメとしては面白くなるかもしれない。
原作の陽ちゃん(みちの夫)は子供がそのまま大人になったような、よくいる「イマドキの男」だ。ゲームが好きで、仕事もIT系デザイナーで、細やかな気配りができるタイプではない。イケメンでもない。
みちは陽ちゃんとバイト先で出会うまでは、野暮ったかったという設定である。
今でこそ少しは垢抜けたが、だからこそこんな自分の相手をしてくれるような男性は陽ちゃんぐらいしかいない、と思い込んでいる。
その女性としての自信のなさが、妻としては収まりが良かったりもする。ただ、時代は令和なので結婚しても当然共働きだし、そうこうするうちに夫とセックスレスになって子供もできず、次の目標を見失ってしまい悩んでいる。
ある意味で、とても現代的な女性だ。
原作はその辺りの「夫婦」としてのキャラ配置が絶妙なのだが、必ずしもドラマがその通りである必要はないと思っている。
しかし、キーポイントとなるセリフはそのまま使われるだろうから違和感なく馴染むかという問題があるし(第1回の「性欲強すぎ」とか)何よりどこまでセックスレスというテーマと向かい合うのかは、第1回を見た時点ではまだ未知数である。
できれば、セックスレスを道具ではなく、きちんとした現代の問題として描いてほしいなあ、と思っている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?