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ファンタジーは苦手だったはずなのに『永遠の昨日』

仕事が忙しくなってくると、BLドラマが見たくなる癖がある。
疲れてくると、甘い物を摂取したくなるのだ。
(いろんな意味で)

そんな秋の夜長にふと見始めた『永遠の昨日』

あー、静かに始まるファンタジー系か。
私、ファンタジー苦手なんだよねー。

『いま、会いにゆきます』とか『黄泉がえり』とかも観たことないし。

コレは途中停止かなー。

そんな感じで第一話を見始めた。

………………………………。

気づいたらあっという間に沼の底だった。

なぜ。

いつ。

どこで。

ファンタジーは苦手とか言ってたじゃん。

いや、あのね。
どこで笑うのかなあとは思ってたのよ。

主役の一人、青海満(井上想良)は笑わない高校生。
第一話の冒頭でも、級友に愛想がないことをツッコまれ「俺だって笑いたくなったら笑う」と言い切っていた。

そんな満が一体どこで笑うのか。
ドラマの構成としては、重要なポイントの一つだ。

いやあ、まさかのシーンだったわ。
あそこでああいう風に笑うとは、全く予期していなかったわ。

画像お借りしました

そのシーンに心つかまれ、と同時に「エンディングは『叶えられなかった明日』の映像なのか」と気づいてしまった。

気づいてしまったのよ(下線部太字強調)

第四話の冒頭まで来たところで、もう一度、第一話から見直した。

そしてそのまま全八話、ラストまでなだれ込み。

当然ながら、最終回のエンディングでは心がえぐられるのではないかと思うぐらい泣いた。ガチで泣いた。

いやあ、だっていくら最近のBLドラマのオープニングとエンディングに仕掛けをするのが流行りとはいえ、アレはちょっと反則だよね?

全部見終わった後に、完全版があることに気がついて、通常版と完全版でローテーションをグルグル繰り返している。(現在進行形)

何と言っても、このドラマは男子高校生のカッコ悪い部分がちゃんと描かれているのがいい。

脚本と監督が男性だと知って、そうだろうなと頷いた。

好きな人を目の前にした時に、男の子がどうしようもなくカッコ悪くなる感じ。ラブシーンも、極力オブラートに包んではいるものの、ちゃんと年頃男子の感じが出ていて。

男性が男性の目線で男性を描いたBLドラマ、というところがいい。

少女漫画に出てくるようなイケメンヒーローのBLドラマも、それはそれで楽しめるけれど、こういうリアルな男の子が出てくるドラマを見ると、元女子のこちらとしては「懐かしい」という気になる。

かつて、そういう年頃男子とつき合っていた頃の自分を思い出してニヤニヤしてしまう。

そして、このドラマは「満がいつ笑うのか」も見所だけど、もう一つ「浩一(小西璃音)がいつ自分の弱いところを見せるのか」というのも注目ポイントだ。

いつも明るくてクラスの中心にいる浩一は、自分が「生きている死体」になってからも、極力いつも通りに振る舞っている。
でも、内心では絶対に「死にたくない」と思っているはずだ。

それを一体いつ見せるのか。

ラスト近く、浩一が泣きながら本心を吐露する場面は予想通りと言えば予想通りだった。
だが、最後になぜいつも浩一が明るく振る舞っていたのか、その理由が明かされるのは想定外だった。

全然似ていないように見える二人は、実は似た者同士だった。
そして、その二人に起きた奇跡を描いたのがこのドラマだ。

そらもう、久保あおいの『遠い夏の日』をエンドレスで聴いちゃうよね。(現在進行形)

最後まで見た時に思ったのは、これは満が浩一の死を受け入れることができずに見た夢でも話が通るということだった。

自分を庇って死んだ恋人の死が信じられず、彼は生きていると信じ込んだ数日間に見た夢。

だが、原作小説にも特にそれをにおわせる下りは出てこなかったので、これは素直に十代の一時期に起きた「奇跡」と読むのが正しいのだろう。

浩一と満の間に起きたことは、この上ない悲劇でもあるが、いつも人生はこの一瞬しかないという意味で、彼らに起きたことは私たちに起きていることでもある。

今この瞬間は二度と戻ってこない。
そういう時間の中を私たちは生きている。

だから、本当はどの瞬間も泣きたくなるぐらい貴重で、それが幸せであればあるほど「永遠の昨日」を願ってしまうのが人間という生き物だ。

だからこそ、どの瞬間も大切に。
千葉の美しい風景と共に、忘れられないドラマがまた一つ誕生した。

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