地獄への扉は希望と絶望に満ちている
今期の朝ドラ『虎に翼』が今のところメチャクチャ面白い。
物語のベースである「女性が不自由だった時代を強く生き抜こうとするヒロイン」を伊藤沙莉が溌剌と気持ちよく演じている。
ハスキーな声で、ぶりっこな感じが少しもしないのも好ましい。
朝ドラにつきものの、ドジで一生懸命なヒロイン⭐︎テヘペロ要素がゼロなのも素晴らしい。
それだけでも感涙ものなのに、ナレーションが尾野真千子なのである。
そう、あの『カーネーション』の糸子を演じたオノマチである。
オノマチが物語の邪魔にならないように、絶妙なまでに抑制の効いた声音で「はて?」「スンッ」と言うたびに、画面がキュッと引き締まる。
子役時代がなく、いきなり伊藤沙莉が登場して物語がどんどん進んでいくのも、いわゆる子供のあざとさを徹底して排除するようで、新鮮で気持ちがいい。
そう、私たちはいつも呪いをかけられてきた。
女の子は可愛くあらねばという呪いだけではない。
女の子は一生懸命でなければという呪いをかけられてきたのだ。
ドジで健気な普通の女の子が一途なイケメンに愛される物語を、我々はどれほど見せられてきただろう。
今、時代はやっと建前の男女平等社会が到来している。
が、もちろんまだまだ建前であり、社会に出れば理不尽な女性差別を受けることは普通にある。
だが、それは不幸なだけではないと伊藤沙莉演じる寅子を見ていると思う。
何より、旧弊な社会に挑戦して、それを打ち破っていくことは気持ちがいい。
第一週の最後、オノマチのナレーションは言う。
「こうして、最後の敵(母親)を倒した寅子は、無事、地獄への切符を手に入れたのでした」
地獄への切符!
カッケー!
そう、これから“女だてらに”法律の道に進むヒロインは、とんでもなく苦労することだろう。
けれど、そのチャレンジの道のりは、絶望とそして希望に満ちているはずだ。
既成の価値観をひっくり返す楽しさは経験した者にしかわからない。
寅子が手に入れた地獄への切符は、実は自由への切符でもあるのだ。
カッコいいぜ寅子!
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