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残念だった『silent』の残念さ

今年の夏ドラマは『VIVANT』が大きな話題になりました。

急遽、出演している俳優達が勢ぞろいした特番まで放送され、最終回の視聴率は19.6%と10%を越えれば成功とされるこの配信全盛の時代に、ドラマとしては高い視聴率を記録しました。

私もU-NEXTで全話見ましたが、日本のテレビドラマというより、Netflixなどで配信される海外ドラマのような雰囲気で、脚本が作り込まれていて面白かったと思います。

全然関係ないのですが、今年の夏に観た映画『リボルバー・リリー』もスペシャルドラマでやれば、もっとウケたかもしれないなあと思いました。
主人公無双のハラハラする脚本と、豪華出演陣という作りは『VIVANT』に似ていると思ったのですが、映画のサイズでそれをやると、当たり外れが出てしまうのかなあと。

『VIVANT』は最近のSNSでの「考察合戦」も充分に計算した上での作りが、これぞ娯楽作品!という感じでプロの仕事だなあと思いました。

ところで、秋から『silent』と同じプロデューサーと脚本家のドラマが放送されるようですね。

『silent』については初回を見て感動して感想を書き、途中でアレッ?となって、また感想を書きました。

アレッ?となった方の感想

結局、最終回まで見たのですが、話題になりすぎて、製作側がそれに溺れてしまったね、と思いました。うん、残念。

というよりテレビ局がね、久々に恋愛ドラマがヒットしたことにね、偉い人達が浮かれてしまったよね。
放送時間を延長したり、特番やったり、あれやこれやと。

今、テレビ局の偉いポジションにいる人達って、ちょうど私なんかと同じ世代、東京ラブストーリーやロンバケが流行った頃の人達だから、ドラマがヒットするのは嬉しいし、中でも恋愛ドラマがヒットするのがすごく嬉しいんだろうね。

俺達の時代、再び!みたいな感じなのかな。

だから、またもやヤングシナリオ大賞の受賞者を使って『真夏のシンデレラ』をやってしまったんだよね。夢よもう一度!っていうね。

アレを見た時に、結局『silent』の何がウケたのか、わかってない人にはわかってなかったのかなあ、と思いました。

そういえば、まだ『silent』の放送中に、プロデューサーと脚本家と演出家が『ボクらの時代』に出て、イロイロ語っていらっしゃいましたね。

アレもよくなかったなあ、と思いました。

もし放送期間中にやるのであれば『VIVANT』もそうだけど、去年の『鎌倉殿の13人』みたいに、出演している俳優さん達にスポットを当てた作りにしないと。

もちろん『silent』はギリギリまで撮影していたので、それが難しかったのはわかるけど、まだ完成していない作品に対して「アレをやらせてもらえるとは思わなかった」とか「ここがすごかった」と作り手側が語ってしまうのは、フィクションを成立させている世界観という意味でも、作り手側の自制心という意味でも、ものすごく危険な橋を渡ることになるなあ、と思いました。

特に『silent』は描写を極限まで省くことによって成立するギリギリの世界観を(最初は)描いていたので、どこまで語るかのバランスが生命線という作品でもありました。

それがいきなり話題になって、テレビ局を挙げてワイワイ番宣をやり出したことで、製作陣の自制心が外れて、途中からは自己満足の世界になってしまったというのが正直な感想です。

その製作陣が「男女の友情は成立するか?」をテーマにしたドラマを作る……って、もう嫌な予感しかしない(笑)

『silent』が途中からグダったことを自覚しているのかと思いきや、番宣インタビューを拝見する限り、そういう感じでもないので、余計に恐ろしいです。

男女の友情は成立するか?という命題だけで言えば、もちろん「する」に決まっています。
けれど、この問いは、そもそも恋愛を覚えたての若い子が、周りに気になる人がたくさんいて、恋愛メリーゴーランドをグルグル回ってる時に、自分を正当化させるための言葉であって、別に彼ら彼女らは本気で答を求めてるわけじゃないと思うんですよね。

ただ、自分の選択が「正しい」と誰かから言ってほしいから持ち出してるだけで、本気で答が欲しいわけじゃない。

それをテーマにするとかね、もう恐ろしいですよ。企画を出した人の脳内お花畑が怖いです。

改めてフィクションというのは、ブレないリーダーとそれを理解して動くチームが上手く機能した時に良い作品ができるのだと思いました。

ぜひ予想を覆す、傑作ドラマになりますように。
私は楽しく『大奥医療編』を見ております。

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