連想を物語る小説:読書録「不思議な時計 本の小説」
・不思議な時計 本の小説
著者:北村薫
出版:新潮社
<宮さん、宮さん>の調べが響く萩原朔太郎の遺品の時計
行き着くところはそこなんだけど、本や映画、演劇等々に記憶の連鎖を追いかけるようにして、そこまでの逍遥を9つの連作にした作品です。
泉鏡花文学賞をとった「水 本の小説」の続編。
…って、内容が続いてる訳じゃないです。
昔の映画「猟奇島」
「痴人の愛」小説、洋画の邦題
映画語り
穂村弘のエッセイ
塚本邦雄のエピソード(誤記)
授業について(上田敏)
萩原朔太郎のあれこれ
映画と父の思い出
朔太郎の遺品
猫町やらパノラマ館やら
堀辰雄から蜂のトランプ
朔太郎の時計
前橋文学館の講演やらシェークスピアやら
読み終わって思いつくままを書き出してみても「なんのこっちゃ」なんですけど、まぁそういう作品なんですよねw。
小説…と言うよりはエッセイなんですけど、連想や記憶の切り出しをするそこにフィクションがあるというのが、北村さんの考え方ですから、これはやっぱり「小説」なのかもしれません。
まぁ、北村さんはそう思ってらっしゃるということで。
読む側にとっては、ジャンルなんか関係ないっちゃあ、関係ないですからw。
興味深くは読めるんだけど「本」に向き合う姿勢は自分とはずいぶん違うなぁということが実感できる作品でもあります。
だから「授業」に関するスタンスなんかもちょっと僕は違和感ありました。
教師側の人間性っていうのが重要なのは、まぁ確かにその通りだと思うんですけど、それが成立するのは、ある種のエリート的な世界だけなんじゃないかななどと思ったりもします(前作を読んだ時も思いましたが)。
そういう世界のことを書いている
北村さんの世界は、それはそれで良いんでしょうけどね。
昭和は遠くなりにけり
もしかしたらそういうことなのかもしれないなぁ。
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