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ひっつめ髪同士のランデブー。


朝いつもの通り歩いて駅へ向かう途中、路地からこの町のメインストリートへ出ようとしたところで女性と鉢合わせしそうになった。彼女は身軽な服装でリュックを背負い、髪の毛はすべて後ろでひとつにひっつめていた。そしてわたしも今日は同じくひっつめ髪だった。

出会い頭の急接近。彼女はわたしの顔をチラリと見遣った後で視線を外しながらおもむろに自分のひっつめ髪を両手で必死に撫でつけ整える仕草をした。

わたしの顔を見た直後にほぼ反射的な仕草で自分の髪の毛を撫でつけたりされたら、それは私の髪が相当ボサボサだということを意味していることになるのではないか。そうでなくても自分の髪が普段からアホ毛だらけだという自覚のあるわたしは戦慄した。必死で自分の引っ詰め髪を撫で付けてみる。それでは気が収まらなくて、まとめてあった髪をいったん解くともう一度まとめ直した。
鏡も見ずに、しかも歩きながらそんなことしたら事態を悪化させるだけだろう。でももう気になって気になって仕方がなかった。

わたしの少し先を行く彼女のひっつめ髪は艶やかな明るい栗色で、永遠の憧れである天使の輪すら発生していた。くせ毛でアホ毛発生率の高いわたしから見たら、撫でつける必要なんてまったくないように見えた。

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