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山形の温泉地でみつけた日常の風景と、梅薫る桃源郷のこと。

このnoteは、古き良き情緒あふれる”湯田川温泉”でみつけた春の記録。はじめてその名を聞く方も多いと思いますが、是非一度は訪れていただきたい、知る人ぞ知る温泉地”湯田川温泉”を写真とともに紹介します。



湯田川温泉は、山形県鶴岡市に位置する温泉地。開湯1300年という歴史をもち、幕末には"新徴組"という浪士組の本拠地になったことで知られているそうです。春夏秋冬でさまざまな表情をみせる自然にかこまれ、春には温泉地にある梅林公園で梅まつりがおこなわれます。

湯田川温泉のいいところ…たくさんあるのですが、特徴をあげるとすれは、泉質・食事・温泉街という温泉にもとめる3つの要素がすべて高いレベルで保たれていることだと感じています。そのなかで、今回は温泉街のことを書きたいと思います。いわゆる、観光スポットと呼べるような特別なものはなにもないですが、そこが魅力であり、"なにもない"ことの豊かさを感じていただけたらと思います。

ほそく:山形県鶴岡市のこと。

山形県鶴岡市は、日本海側に面した山形の西側に位置し、”庄内地方”に分類されています。首都圏から遠いイメージですが、羽田空港からANAの直通便があり、飛行機なら1時間足らずで庄内空港へ到着します。新幹線だと新潟経由で3〜4時間の道のり。都心から距離は離れているものの、案外アクセスが良いのです。(首都圏の方に是非知ってもらいたい!)

庄内空港や鶴岡駅から、湯田川温泉へは車で30分程度で到着します。山にかこまれた温泉地は、徒歩圏内にコンビニもなく秘湯というイメージが近いかもしれません。

湯田川では、そこに暮らす人々と温泉街の区切りがとても曖昧で、観光客と住民が入り混じっている風景を日常的に見ることができます。この土地のいちばんの見どころは、地域の人々の営みが感じられるところなのかもしれません。

さて、前置きはこのくらいに、さっそく街の雰囲気を紹介していきたいと思います。


共同浴場"正面湯"

奥に見える木造の建物が、湯田川温泉の共同浴場"正面湯"です。湯田川に暮らす方々のためのお風呂ですが、観光客の入浴も可能。すぐ近くの船見商店で200円を支払い鍵を開けてもらいます。発券機などはなく、このアナログなシステムが魅力。シャワーのない簡素な温泉ですが泉質の良さを感じられ、正面湯のすぐ横で湧いている源泉が、各旅館へ供給されています。

正面湯の前には足湯も。
由豆佐売神社

正面湯からまっすぐに進むと、由豆佐売神社があります。古くからこの土地をまもる神さまとして祀られているそうです。立派な木々は、銀杏と杉の木。秋には美しい黄色の絨毯が見られます。(そのかわり?春の杉花粉には要注意!)山田洋次監督の映画『たそがれ清兵衛』のロケ地になったそうですよ。

境内から真っ直ぐに正面湯への道が続いています。この道が、正面湯と由豆佐売神社をつなぐ参道です。地元のおじいちゃんおばあちゃんは、正面湯を出ると神社の方向に頭にお辞儀をする習慣があり、目にするたびにハッとします。そうした心ある行為がお湯の豊かさを守り続けているのかもしれません。

梅林公園へあがる階段の途中、咲き乱れるキクザキイチゲ。太陽に向かって顔をあげている姿は、なんだか笑っているようにも見えます。誰のものでもない、小さな野草。ひとつひとつは素朴なお花ですが、逞しく咲く姿は、それはそれは美しいものです。

そして梅林公園へ。高台に位置し、晴れていれば鳥海山を見ることができます。甘い梅の花の香りがただよい、まるで桃源郷のよう。広い公園内を散策するのも楽しいですが、わたしはお弁当を持ってきてゆっくり過ごすのが好きです。

湯田川温泉の梅まつりは、毎年4月の第2週目におこなわれます。横浜育ちのわたしからすると、梅が咲くのが4月!?と驚いてしまいますが、3月に梅林公園をのぞいた時にはまだ雪が積もっていたので、そりゃ4月になるよね、と納得したのでした。

湯田川を囲む山には竹林が広がっていて、そこかしこに青々とした竹の姿を見ることができます。5月には筍が収穫できて、"湯田川孟宗"として各旅館で提供されます。その時期は予約が取れないほどで、大変な人気があるんですよ。(庄内では筍のことを孟宗とよびます)

みなさんが温泉に求めることって一体なんでしょう。それぞれにあると思いますが、きっと第一位は、"日頃の喧騒から離れ、ゆっくり過ごしたい"というような要望ではないでしょうか。忙しなく過ごしている日々に"なにもない"のは少々困りものですが、ゆっくりするとなると、"なにもない"のが最高だと思えてきます。気の向くまま湯に浸かり、温泉街をお散歩して、お参りをしたり、季節の草花を愛でてみたり。湯田川に来ればそんな時間が過ごせるはずです。


まろやかな光差す春の湯田川が、なんだかとても幸せな雰囲気に包まれていたので、これをどうにか伝えたいという気持ちでnoteを書きました。型にはめることでは語れない、ローカルな魅力。すべてを言葉で説明するのは難しいので、せめて空気感が伝わるといいなと思っています。


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