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2024.4.26 続々・そばの香りを考える。~香り試験の考察~

4月26日(金)
先週の木曜日に大阪のそば屋にお願いして、「そばの香り」試験を行ってきました。
このお店は、ミシュラン大阪のビブグルマンに選ばれているお店です。
うちの工場にも遊びに来ていただいた縁から、大阪に行ったときはいつも寄っているお店です。


今回食べ比べ試験を行ったのは5種類です。
基本的に大阪のお店で出してるように製粉してもらいました。

①天童高原産でわかおり
②通常でわかおり
③通常でわかおり(山形で製粉)
④長崎県諫早産在来種
⑤④の粗挽き

ここで注意して欲しいのは、どれが美味しいとかいう試験ではなく、何が香りのファクターになっているかをあぶり出す試験だということです。

これらを食べたときの感想と、後日ご主人とXのメッセージでやり取りした内容に加え、今までの私の仮説も踏まえて5つの視点で考察しました。


1 香りの言語化について
やっぱり香りの言語化は難しいということを再認識しました。
私としては「ナッツ系の甘い香り」と表現していて、アーモンドとか枝豆と言う人もいるので、同系統の香りを感じてる人は結構いるように思います。
ただ、ほとんどの人は言語化を考えたことがないようです。無理やり言語化してもらうと、全然想像していない言葉も出てくるので、感覚が違う人も多いということになります。
つまり「香りがいい」と口では言っても、実は重要視していないとも言えます。

2 味覚とのクロスモーダルについて
私自身は味と香りが区別できていません。なので、ごっちゃにして「風味」と表現しています。今回食べながら、最初にやってくる風味と後からやってくる風味があると再認識しました。先味後味というやつです。
で、先にやってくるのが香りの中の「口中香」(戻り香)で、後からやってくるのが味覚なのかもしれないと感じました。あくまでも仮説なので、味覚センサーで反応速度を調べたいと思います。

3 視覚とのクロスモーダルについて
見た目によってどれだけ風味が引っ張られるのか?これはかなりあると思います。今回言語化してもらった中で、色に引っ張られてるものが多く含まれていました。青いそばは青系の香り表現、茶色いそばは茶系の言葉といった具合です。
できれば、色が認識できない明るさと認識できる明るさでの下で、2回香り試験を行って、有意な差が出るかどうかの試験をやってみたいです。
またこれを逆手にとって、見た目で香りを連想させる販売方法は有効だと思います。

4 原料の差
原料による風味の差は確実にあると感じました。完全に同じ条件で比較することはできないんですが、今回はなるべく同じ条件で比較しようと試験を行った結果、やっぱり原料の差があると感じました。
では、どういう品種でどういう条件で栽培されたものが風味が強いのか?これはまたいろんなデータを積み上げる必要があります。

5 加工の差
今回は製粉の差も比較してみました。結論から言うと微妙な差でしかないと感じました。大阪で製粉したものや山形で製粉したもの、粗挽きのものなどいろいろ比べましたが、風味に関しては思ったほど差がなかった感じがします。
食感が変わるので、美味しさの印象は大きく変わるのですが、風味に関しては原料の差の方が大きいと感じました。
また以前加水率を2%位変えて打っても、食感は変わっても風味はあまり変わらない感じがしました。


以上が今回の考察ですが、「香り」についてものすごく理解が深まったとは言えませんでした。それでもこうやって定期的に言語化しながら考えないと、いつまでも進歩しない分野だとも感じています。

これからは、
・そばに精通した人の意見をいっぱい聞く
・香りについて評判のそば屋さんを食べ歩く
・仮説を検証する小規模な試験を積み重ねる

「そばの香り」について完全に解明することは無理でも、「そばの香り」について日本一語れる人にはなりたいと思います。


それでは本日もよろしくお願いいたします。


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