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Teslaの充電規格が世界標準に?!

はじめに

 北米現地時間の6/8にGMがTeslaの充電規格との互換アダプタ採用&自社EVへの搭載を発表、関係各方面は結構な騒ぎになっていますが、NACS(Teslaの規格)がデファクトスタンダード化に王手をかけたものと思われます。
 色々とFactやInsightをまとめてみましたが、日系メーカーがこれから標準規格を取りに行くのはEVラインナップ/普及率等を勘案しても死に筋…こうなると取り得る施策は2方向で、[1;もう一方の規格であるCCSへの肩入れ][2;NACS拡大の先鋒]になろうかと。
 EVはもとより、それ以外の用途でも急速充電が肝となる中ではNACSに張るのが勝ち筋と考えるところです。今のうちに米系OEM通じてTeslaと連携、急速充電に係る日本むけカスタマイズやアダプタ等開発を行い、日本の販売総代理店のような動きをするのが良きと。いやあ、色々びっくりでした。

1;Fact整理

 GMがTeslaのEV充電規格との互換アダプタ採用&将来EVでのTeslaコネクタ搭載を発表、5月末のFordに続いての連携発表で他OEMも追随する可能性が出てきて、NACSの拡大に弾みが。
 今回の提携が計画通り実現すると、GM-EVの所有者は米/加に展開する12,000以上のTeslaのスーパーチャージャーを利用することが可能になる。また、GMの次世代EVには2025年から北米充電規格(NACS)と呼ばれるテスラの充電ポートが搭載される予定。
 連携施策をまとめると以下の2点
(1)Phase1;2024年初頭~
 GM/FordのEV保有者は転換アダプタ利用でTeslaの充電NW(Teslaの約17,000台の充電器のうち12,000台に対応)を利用可能に
(2)Phase2;2025年~
 GMの2025年以降生産EVはNACSコネクタ(Tesla規格)搭載に切替

2;両社にとってのメリット

 本件提携によってGM/Teslaの両社にとってのメリットは下記と考えられるが、北米におけるEVx充電インフラは完全いTesla覇権になるものと。

2-1;Teslaへのメリット

 TeslaはEV充電におけるデファクトスタンダードを狙い、規格設定/コア技術の保持を通じた事業展開を見据えているものとみられる。
 そこでのメリットは大きく3つで、[1;安定収益の獲得(強い価格決定力の保有と維持)][2;マーケティングコストの削減(社会一般での認知/利用が常識化してアタリマエに)]3;[特許/ライセンス契約(特許の一部開放での研究促進/ライセンス料獲得)]となる。
 一方でデメリットも存在し、[A;模倣品/互換製品への対応(特許権侵害などへの対応)][B;独禁法対応(特定事業におけるシェアによっては対応必要)]となる。
 とはいえ、GM-EVも対応することで充電NWの稼働/利用を高め、充電収入を得ることでNWをさらに拡大することが可能となり、ネットワーク効果&規模の経済を最大限享受することが可能に。

2-2;GMへのメリット

 GMにとっては完全に出遅れたEV対応と顧客体験の提供という点が大きい。すなわち、EV保有者への充電アクセス/利便性の向上を通じた顧客体験の高度化となる。特にTeslaの充電NWは高速道路の近くに設置されることが多く長距離移動に適合している。
 ちなみに、本件を通じてGMのEV保有者が利用できる充電器は現状の2倍以上に。

3;周辺事業者の受け止め

 EV充電規格/充電器/サービス各社から様々なコメントが為されるが、基本的には歓迎するものである一方、CCS規格団体からは否定的…そりゃそうだろうなと思いつつ、最終顧客の利便性を考えましょうね。
(1)SWTCH Energy(EV充電ソリューションプロバイダー)
 [Ford&Teslaの連携は、公共充電インフラに対する地方/州/連邦レベルでの公的資金の配分に革命を起こす可能性を秘めている」
 [この連携は進化する充電ニーズに対応し、よりスケーラブルで堅牢なインフラを構築することになる]
(2)EVgo(急速充電PF)
 [業界全体のサプライヤーがアクセスできる形で公表され、EVドライバーが多くの充電オプションを使えるようになることを望む]
(3)CharIN(CCS促進団体)
 [CCSは世界標準であるため、国際的な相互運用性に重点を置いており、NACSとは異なり、公共のDC急速充電以外にも多くのユースケースをサポートできるように将来性を備えている]

4;その他

4-1;NACS規格って?

 Teslaが開発/採用する充電規格;NACSは[AC充電とDC充電(最大1MW)の両方を提供する充電コネクタ]が装備されていることが特徴で、片一方のCCSコネクタと比較すると、コンパクトさ/使いやすさ/性能の高さで強み。
 ここ最近、TeslaはNACSを北米の新標準として確立するための動きを出しており、EV充電コネクタのデザイン公開を通じてNW事業者/OEMに採用を促している。

4-2;米国の状況

 米国には現在約54,000の公共充電ステーションがあるが、殆どは充電速度は標準レベル(Teslaよりはるかに遅い)。米政府は75億USDの予算をかけて急速充電チャージャーの拡大を政策として公表済み。Teslaに対しても充電NWのうち少なくとも7,500の充電器を24年末までにテスラ以外のEVに提供すべく働き掛け&補助をオファーしていた。
 ちなみに、EVgo/Electrify Americaの急速充電器はCCS/NACS両方のプラグがあり、規格に関わらず対応可能

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