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米国のEV補助金要件が緩和へ

米国財務省と歳入庁が2024年のEV補助金に関して規制変更を発表しました。
車輛要件/購入者の納税要件の緩和をして対象EVの拡大をしつつ、車両部材や工程に係る米国/友好国の構成比率の引き上げで保護主義色を強めています。
今回の改定でToyota/Honda(Acura)/Nissanの日系各社も対象となったところ、規制理解とディーラーでの対応が急務となりそうです。

1;2024年度のEV補助要件のリリース

 5/3に米財務省と内国歳入庁(IRS)は、EV税額控除ルールを更新して対象となるEVのラインナップを拡大すべく要件変更。対象車両の拡大に向けた車両要件/所得水準の緩和がメインだが、保護主義的な強化も同時に行われた
 (緩和)メーカーあたり20万台の車両制限を撤廃
 (緩和)EV購入者/EV価格の適格基準を追加
 (強化)北米での車両組立条件の強化
 (強化)バッテリー材料/部品の生産で北米/米FTA締結国シェアを高める

 特にバッテリー/鉱物要件は自動車メーカーに大きな問題となっており、バッテリーパスポートなどの取組を通じて追跡可能性の透明化を行っている
 調達に係る実現性の担保に向けて、財務省/IRSは黒鉛/電解質塩/バインダ/添加剤の調達に関する規則の一部を2027年まで緩和することを決定

2;EV税額控除についての詳細

 当該制度は対象となるEV/PHEVを購入する納税者に提供される非還付税額控除。非還付税額控除は対応控除額だけ税額を軽減するが、超過額の払戻しは無い
 2024年度には納税者は[税額控除請求]か[対象ディーラーへの控除譲渡]を選択可能で、控除譲渡では参加ディーラーは対応控除額だけ車両価格値下げor現金提供によって購入者に還元される

[対象車種]
 24/05時点で以下の車種で24/01以降に納車された場合に税額控除の対象となる。IRSは[FuelEconomy.gov]のサイトツールを使用して、最新情報の入手を促している
 代表的な対象車種は以下の通り
 -Acura;ZDX (2024) $7,500
 -Audi;Q5 PHEV 55 TFSI e quattro/Q5 S Line 55 TFSI e quattro $3,750.
 -Cadillac;LYRIQ $7,500.
 -Chevrolet;Blazer/Bolt/Bolt EUV/Equinox $7,500.
 -Chrysler;Pacifica PHEV $7,500.
 -Ford;Escape $3,750.
 -Ford;F-150 Lightning $7,500.
 -Honda;Prologue $7,500.
 -Jeep;Grand Cherokee PHEV/Wrangler PHEV $3,750.
 -Lincoln;Corsair Grand Touring $3,750.
 -Nissan;Leaf S/Leaf SV Plus $3,750.
 -Rivian;R1S Series/R1T Series $3,750.
 -Tesla;Model 3 $7,500.
 -Tesla;Model X/ModelY $7,500.
 -VW;ID.4Series $7,500.

3;EV税額控除の資格;納税者

 24年のEV税額控除の資格を得るには下記条件をクリアする必要
(価格上限)
 一定のメーカー希望小売価格制限があり、メーカーの基本小売価格に納車時に物理的に装着されるアクセサリ/オプションの小売価格を加えたもの
 -バン/SUV/PUTでは希望小売価格が80,000ドル以下
 -セダン/乗用車などのその他車両は55,000ドル以下
 -中古車の場合には価格上限は25,000ドル以下
(所得制限)
 納税者の修正調整総所得にも制限を設けているが、[他年度の実績利用][401K/HSA拠出などを通じた調整]といった抜け道が多い
 ・新車EVの場合
 -独身者/夫婦が別々申告:150,000ドル
 -世帯主:225,000ドル
 -夫婦共同申告:300,000ドル
 ・中古EVの場合
 -独身者/夫婦が別々申告:75,000ドル
 -世帯主:112,500ドル
 -夫婦共同申告:150,000ドル

4;EV税額控除の資格;EV車両

(最終組立要件)
 車両が北米で最終組み立てされる必要があり、詳細はNHTSAのVIN(車両識別番号)-DBを参照して確認できる
(中古車の判断)
 中古車は、最小で7Kwhのバッテリー容量を備えたEV/PHEVである必要がある。車両の最初の譲渡のみが対象で購入価格は25,000ドル以下、車種は少なくとも2年前のものであり、車両重量は14,000ポンド未満
(EV税額控除の要件)
 最大7,500ドルの税額控除はバッテリー要件/調達要件で構成され、それぞれが控除の半分を構成。1要件のみを満たす場合は3,750ドルの部分控除に
 24年以降は懸念対象国(中国など)からバッテリー部品の調達が出来なくなり、更に25年以降には懸念対象国から調達された重要鉱物を含めることが出来なくなる
(バッテリー要件)
 車両バッテリーの一定割合が北米内で組立/製造される必要があり、閾値は以下の通り
 -2023年:50%/2024年:60%/2025年:60%/2026年:70%/2027年:80%/2028年:90%/2029-32年:100%
(重要鉱物要件)
 対象車種のバッテリーに含まれる重要鉱物の一定割合が、米国内/米国とのFTA締結国で産出&処理される必要があり、閾値は以下の通り
 -2023年:40%/2024年:50%/2025年:60%/2026年:70%/2027-32年:80%

5;追加インセンティブ

 連邦政府の税額控除だけでなく、州/地方によっては追加インセンティブが用意されているが一部州では二重取りを禁じており注意が必要。
 -CA州の[Clean Air Vehicle Program]では特定EVは相乗りレーンへのアクセスが許可
 -NY州では連邦税額控除に加えて、州の最大2,000ドルのリベートが提供される

6;リースとEV税額控除

 EVリースに関しては連邦税額控除は対象外だが商用車税額控除の恩恵を受けられる可能性。Tricle Down Serveと呼ばれる仕組みで、個人が利用できるクリーン車両控除よりもはるかに制限が緩い。こちらの対象は米国外製造も含めて幅広なEVで減税請求ができる
 ディーラーは車両購入に対して税額控除を受け、個人にリースする時点で控除額分を費用から値下げして節約転嫁を行う。もちろんディーラーに節約分転嫁の義務はないので、比較/交渉する必要はある

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