見出し画像

クリスマス⭐︎カラス【ショートショート】

カラスは13番目の月の使者なのでした。
12月から13月へと受け継がれる儀式は真夜中に行われたので、漆黒のカラスは誰にも見えなかったのです。そんなわけで神様は使者はいないものと思い、世界から13月を消してしまいました。

目抜き通りの大きなクリスマスツリーを眺めるカラスの瞳に、イルミネーションの光がぺかぺか映ります。その時カラスは、この光があれば真夜中でも自分の姿が見えることに気づきました。
カラスは神様に頼み込んで、再び使者になるチャンスを貰いました。
クリスマスの夜更け。ツリーのてっぺんの星が輝くのを合図に、カラスは赤い服を纏い、重い荷物を吊り下げて夜空へ飛び立ちました。一晩で世界中の子供達に贈り物を届けなければ使者失格です。それが来月13月の使者になるための、神様との約束でした。橇を持たないカラスはたった1羽で休まず飛び回ります。


「今年は楽ちんだな」

白髭の老人は、暖かい部屋でチキンを頬張りながら、窓の外の闇の羽音に耳を澄ませました。

fin.


『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』

*********

田原さんの企画に参加させていただきました。
ありがとうございました。

(420文字...ちょっと出ちゃいました)

#ショートショート #ショートストーリー
#毎週ショートショートnote
#クリスマスカラス

文章を書いて生きていきたい。 ✳︎ 紙媒体の本を創りたい。という目標があります。