鈴懸ねいろ

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鈴懸ねいろ

綴リスト*エッセイ.小説.空写真。日本左利き協会ホームページにてショートストーリー連載中*AJINOMOTO PARK×noteコンテスト『おいしいはたのしい』審査員特別賞。秋の読書感想文コンテスト佳作。ショートショートnote杯佳作。

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  • ショートショート集

    自作のショートショートのマガジンです。

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    自選エッセイをいくつかまとめました。 時々入れ替えたり追加したりしています。

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    【日本左利き協会】さんにて連載させていただいている ショートストーリーです

  • わたしの空【空色図鑑】

    noteに掲載してきた『わたしの空』を図鑑仕立てにしました。あなたの心に響く空をみつけられますように。

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世の中には 自分によく似た人間が三人いると 言われている。 それが単なる迷信だとしても、 違う遺伝子を持ちながら似ている人というのは たしかに存在している。 目や鼻のかたち、髪型、背格好。 立ち姿。雰囲気。 すべてが完璧に同じではなくても、 だいたいの配置やかたちが似ていると感じると、 私たちはその相手を 知っている誰かだと思い込むものらしい。 人にはいくつかの大まかなパターンがあって、 皆、それらのどれかには当てはまるように できているのかもしれない。 自分と似た人が今も

    • ハグ・マイベア。

      ぬいぐるみを抱きしめてみればわかるさ どんな子でもいいんだ ひとつくらいクローゼットの奥にいるだろう 薄汚れた顔の幼なじみのテディベア 埃っぽい再会をして ぎゅうっと抱きしめるんだ 抱きしめているとき きみはテディベアから愛されている しっかりとそれがわかると思う やわらかいおなかをなでて ほおずりをしていると 体のくっついているところが温かくなってくる きみの悲しみも よろこびも 不安もすべて プラスチックな瞳で優しく見つめている きみの声に耳を澄まして テディベアはから

      • 明日の約束、忘れないでね。

        • 文学トリマー?【毎週ショートショートnote】

          「田中の奴、文学トリマーを使いやがったな」 道の向こう側を悠々と歩く田中に、 清水は舌打ちした。 田中が胸に抱えていたのは、 先週書き終えたばかりの原稿ちゃんだ。 田中の原稿ちゃんは 流行りのサマーカットを施されて、 すこぶるご機嫌だった。 原稿ちゃんの短めのセンテンスの隙間を、 風が通り抜けてゆく。 青空のように爽やかな言葉が映える。 田中の筆致を信頼し切った原稿ちゃんは、 腕の中でウトウトし始めた。 「いいよなあ、作者にあんなに懐くなんて」 「俺も文学トリマーに梳いてもら

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        • わたしの空【空色図鑑】
          1本
        • 食べることは生きること。
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        記事

          雲と行こう。風に乗ろう。

          雲と行こう。風に乗ろう。

          月の上を散歩しているようにしか見えない。 影もふわりふわり月面を滑ってゆく。 リーフィーシードラゴンの 小さなハミングが聴こえた気がした。

          月の上を散歩しているようにしか見えない。 影もふわりふわり月面を滑ってゆく。 リーフィーシードラゴンの 小さなハミングが聴こえた気がした。

          飛ぶ時を待ちわびる。

          飛ぶ時を待ちわびる。

          風は緑色だった。

          五月の風はひときわ美しい。 湿度は低く、さらりとしていて緑の匂いがする。 こんなにいい季節に 部屋に閉じこもっているのはもったいないと 思う性分なのだ。 特に用事らしい用事がなくても、 何となく外へ出る。 通りを歩いてみる。 家々の門のきわに植えられた花を見てまわる。 私の心のなかの小さな子どもも、 嬉しくてくすくす笑いながら スキップをしているのだ。 たくさんの芽吹きを瞳に映して、 自分の内側にためていこうと思う。 ✳︎ そんな五月にお知らせです。 日本左利き協会さんの

          風は緑色だった。

          雲チョーク、黒板消し忘れ。

          雲チョーク、黒板消し忘れ。

          部屋に帰ってきて最初にすることは何?私は靴下を脱ぐこと。勢いよくぽんぽん脱ぎちらかすと、歩き疲れた魂が足先からにゅる〜っと解き放たれて自由になる。ひんやりした床をぴたぴた歩いて、台所で水を飲む。裸足と喉が初夏の訪れを祝っている。さっきまでいた外に目をやる。緑が煌めく。命がある。

          部屋に帰ってきて最初にすることは何?私は靴下を脱ぐこと。勢いよくぽんぽん脱ぎちらかすと、歩き疲れた魂が足先からにゅる〜っと解き放たれて自由になる。ひんやりした床をぴたぴた歩いて、台所で水を飲む。裸足と喉が初夏の訪れを祝っている。さっきまでいた外に目をやる。緑が煌めく。命がある。

          思い出を拾い集めて雲に乗せよう。

          思い出を拾い集めて雲に乗せよう。

          近ごろ海を見ていない。

          近ごろ海を見ていない。

          春の空を編む。

          春の空を編む。

          朝寝坊の報復。#新生活20字小説

          覚えとけ目覚まし時計帰ったら分解の刑な。 ****** 小牧幸助さんの企画参加、第四弾です。 ありがとうございます。 * 朝寝坊は、いかんです。 いかんともしがたい。遺憾です。 寝坊したいのに起こしてくる目覚まし時計への 八つ当たり説と、 起きる時間を過ぎても鳴らなかった 目覚まし時計への報復説と。 ふた通りの解釈ができることに気づきました。 (後者の心づもりで書きましたが どちらでもいいなあと思いました) #新生活20字小説 #シロクマ文芸部

          朝寝坊の報復。#新生活20字小説

          まいにち、おみそ汁をどうぞ。

          夕餉の始まりにおみそ汁をひとくち啜ると、 ああ、と声が漏れてしまうのだった。 今日も一日お疲れさま。 自分に対してそんな言葉をかけたくなる。 その日の締めくくりの食事には、 必ずおみそ汁がつく。 出汁と具材の旨みがお腹にじんわり沁みて、 身体のなかから温まると、 気持ちもゆるゆるとほぐれていくのだった。 おみそ汁は別名「おみおつけ」ともいう。 漢字で表すと【御御御付】だ。 室町時代の女房言葉として使われ始めたらしいが、「御」が三つもつく最上級の丁寧感にも納得するのだった。

          まいにち、おみそ汁をどうぞ。