見出し画像

2024年1月1日に発生した震度7の能登半島地震について(報告)

昨年の震度6強の地震ではブログを書くことができたのが地震発生から2日後でした。今回はこんなに時間がたってしまったことをお詫び申し上げます。
というか、もう書けないとあきらめたのですが、ここにきてやはり当日の記録を残しておきたいという思いが強くなりました。

現在の状況について

現在、珠洲ビーチホテルは救援にかかわるいくつかの団体に場所貸しをしており、全てのスペースが埋まっております。
新規の団体様の受け入れは不可能で、一般のお客様もお断りしております。
各団体様にはすべて自己完結で場所を使っていただき、スタッフも24時間体制では常駐しておりませんので、ご了承のほどよろしくお願いいたします。

(16:06)震度5強の地震発生

2024年1月1日 16:06 震度5強の地震が発生しました。
元旦のご予約が少なく、館内には私を含め2名のスタッフしかおらず、手薄な時間帯でした。
1名が大浴場やパブリックスペースで怪我をした方などいないかの確認をし、そのまま本日チェックインのお客様のお部屋の確認(倒れたものなどを直し販売できる状態にする)に走りました。
これまで大きな地震を何度か経験しているため、マニュアル通りにスタッフが1名4Fに向かいました。

(16:10)震度7の地震発生

厨房へガスの元栓を確認しに行きたいけど、チェックインの時間帯なのでフロントを動けず、もうひとりスタッフがいればと思っていたところに震度7の地震が発生しました。
私はフロントにいたのですが、昨年の震度6強の地震を「立っていられないほどの揺れ」と表するなら、今回は「座っていても転がって行ってしまうほどの揺れ」でした。
長く終わらない揺れと、遠くで聞こえるガラスの割れる音などを聞きながら、必死で机の下に潜り込みました。
長い揺れが収まった後、呆然としてしまいました。
目に映るロビーのガラスがほぼすべて割れているのです。

明るくなってから映したロビーの様子
当日は気付きませんでしたが、大きな段差が
上の窓まで割れています

一昨年の震度5強で2枚、去年の震度6強で4枚、今年の震度7で16枚。
珠洲では「次地震があったら津波が来る」とずっと言われていたため、避難の準備を始めました。
事務所の中も入れる状態ではなく、避難の際にヘルメットを持っていく段取りになっていたのですが、ヘルメットが倒れたキャビネの下に。

冷静になって、一歩間違えていたら下敷きだったとぞっとします

PCや本日のお客様情報のファイル、マスターキーなどを探していると、社外にいるスタッフから「津波が来るので避難して」との電話があり、4Fにいるスタッフに電話をし、待機するよう伝えました。珠洲ビーチホテルは津波の避難場所になっているため、次々と避難者が入ってくるため、一旦4Fへお客様の誘導を行いました。本来はより上階に避難していただく段取りでしたが、4Fには連泊のお客様もおりスタッフと合流していたので、別れて避難するより一旦合流した方がいいと判断しました。いつまで避難者が入って来られるか分からないので、しばらく待ちましたが、入館する方が途切れたため「4Fへ」と張り紙を行い、私も上階へ行きました。エレベーターホールにはたくさんの避難者が来られ、不安な顔で座り込んでいました。津波の到達や津波警報の解除などの情報が一切入って来ず、外も暗くなってきたため、このまま長期戦になると判断し4Fの客室を開放しました。この時点で30人ほどいらっしゃって、トイレをしたいという要望があった為、一部屋トイレの利用ができるよう開放しました。もう詰まっても仕方がないと覚悟しました。

(20:00)飲料水の確保

売店はガラスが割れ、冷蔵庫が倒れていたのを片目で確認していたのですが、着の身着のまま靴も履かずに駆け込んでこられた方もお見受けし、出来る限りの物資を集めてお渡ししたいと思い、1Fへ。
大津波警報は解除されていなかったのですが、覚悟して物資を集めました。
皆様に水などをお配りしましたが、2人に1本くらいしか集められませんでした。
この時間になって、避難した人がご家族や友人知人などを呼び、少しづつ人が増えてきました。
最初はお名前や人数を記録していましたが、スタッフが毛布をかき集めたり、お飲み物を配ったりしている間に入ってしまった人もいて、数が追えなくなってきました。
ホテルから市内の状況は全く分からないのですが、避難してくる方からかなりひどいことになっているとお聞きし、家族とも連絡を取りながら高台に避難していることを確認でき、私はここでこの夜を乗り越えるしかないと覚悟が決まりました。

(22:30)非常用電源の停止

法定では30分といわれていた非常用電源が5時間半で消灯しました。
避難者が各家族で部屋を使われているのでスタッフは部屋に入れず廊下で横になることに。
少し落ち着いたので、ホテルの状況を確認しに1Fに下りました。
ずっとボイラー室やガス庫など気になる場所はあったのですが、詳しいスタッフも被災していて連絡が取れなかったり、ホテルまで行けないとの回答があった為、警報表示で「ガス漏れがない」と確認し、現場までは行けていませんでしたが、ガス庫は大きく傾き、受水槽はパネルが外れて割れ、大きな段差や亀裂を多数発見しました。
これ以上は余震もあり身の危険を感じたため、何事もありませんようにと祈るしかありませんでした。

翌日受水槽の破損を確認
これがないと水を送れないので、営業は出来ません
裏にガスがあり、傾いている倉庫が1晩気になってました
(ガス会社さんには連絡済)

(0:00)避難者の増加

巡回を行っていると、ぽつぽつと入って来られる方がいらっしゃいました。
4Fを見ると、最初の避難者が自室のように使ってお休みになってしまっていたので、これ以上入れるスペースはなく、2Fのコワーキングスペースを開放することに。
4Fからすべての毛布をおろしました。
スタッフは4Fと2Fに分かれ待機することにしたのですが、ここまで一緒に対応してきたスタッフと離れることがとても不安に感じたことを覚えています。
2:00、車で避難している高齢者を受け入れてほしいという要望があり、2Fまでサポートしながら上がってもらいました。
だんだん避難者が増え、約70人の避難者が集まりました。

(5:00)静かな夜

対応しなければならないことがなくなりましたが、まだ入ってくる方がいらっしゃるかもしれないので、寒い風が入ってくる2Fの廊下で少し横になり、早く朝が来て状況を把握したいと、明るくなるのをじっと待ちました。
真っ暗な夜がこんなに怖いとは。

(10:00)一時的な避難場所を閉鎖

7:00頃、明るくなってきたので出て行かれる方も。
津波警報が解除されたタイミングで、避難所である蛸島小学校へ移動していただくことに。
スタッフも家族や家の状態などを確認するために、いったん解散しました。
普段は10分ほどで家に帰れる道が、倒壊した家屋や盛り上がって割れたアスファルトで50分かかって帰りました。
後日海を見に行きましたが、津波は少しだけ来たのかな?と思いました。

このあたりまで海洋ゴミっぽいものが来ていたので、少しだけ波が来たのだろうと推測
ホテルから海水浴場へ向かう道
まっぷたつに割れています

以上が、当日の珠洲ビーチホテルの様子です。
過去の地震からいろいろな想定を行って訓練もしてまいりましたが、もっとこうすればよかったかもと思う一方で、70名の皆様の命が無事でよかったなと改めて思います。
最後までご覧いただき、誠にありがとうございました。
これをもって珠洲ビーチホテルのブログは一旦お休みさせていただきます。

海側は地盤が緩いのか、段差が出来ています
亀裂が大地震を物語ります
買ったばかりの物置

後日談とお礼

全てのスタッフの安否を早い段階で確認出来ました。
スタッフのほとんどは2次避難し、珠洲市内には残っていません。
すでに移住や再就職に向けて動き始めているスタッフがいたり、金沢からリモートでお手伝いをしてくれるスタッフがいたりと、珠洲には現在数人しか残っていません。
これから珠洲ビーチホテルは無人化を計画し、各団体様の管理のもと、リモート対応や現地に残ったスタッフが何かあれば駆けつけるという対応にシフトする予定です。
一般の方からの問い合わせ、雨風がしのげる場所の提供をと連絡が入ることもありますが、現地に残ったスタッフも全員被災しており、避難所で暮らしたり、避難所運営のお手伝いや地域ボランティアに日々時間がとられております。(家の片付けすらまだ出来ていません!珠洲には人手が足りなさすぎる!)

そんな中、1/4にようやく電話がつながるようになり、やらなければならないことが多すぎたため助けてください!と電話をし、たくさんの企業さんに対応をして頂きました。
すでに頂いている予約のキャンセルをお手伝いいただいた楽天トラベルさん、JTBるるぶさん、予約が取れないよう操作してくださったらく通さん、HPを管理していただいているアデリープランニングさんにはすぐに営業不可の案内をUPしてもらい、しばらく無料でHPを使わせてくださるという温かい支援をいただきました。
ガス会社のリビック能登さん、エレベーター保守会社の三菱電機さんも早い段階で混乱の珠洲に入り、緊急対応をしてくださいました。
私達の知らないところできっといろんな方が珠洲ビーチホテルを災害支援してくださったこともあったと思います

そして、珠洲ビーチホテルに心を寄せてくださっている皆様の温かいお言葉にここまで頑張って来れました。

経験したことがない未曽有の大震災。
家の周りは倒壊家屋だらけで、顔を知っている近所の方がたくさんお亡くなりになり、避難所では今日明日の命を守るべく奮闘している人達がいて、救急車を呼んでも来ないという現状。
そんな中更新したXで「昔泊まったことがあってとてもよかった」「またいつか泊まりに行きたい」と心を寄せて頂いた皆様のお言葉に、つらい時期を乗り越えることができました。
きっとまた、心が折れそうになる日が来ることもあるかと思います。
その時は、頂いたお言葉を再度拝見します。
この場を借りて、関わって下さった皆様にお礼申し上げます。

昨日避難所で誰かが「今日の月はきれいだよ」といい、みんなで見に外に出ました。
停電の真っ暗な珠洲では星もかなりきれいでした。
大好きな鉢ヶ崎の海を見に行き、変わらない美しさにほっとしています。
私達はこんな時でも珠洲を変わらず好きです。
珠洲ビーチホテルの行く先はまだ全く手探り状態ですが、私達が出来ることを精一杯行っていきます。

1/6ホテルから徒歩3分、いつもとかわらない海
蛸島の町
ホテルの客室から見える1/8の雪景色

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?