インニョンに寄せて
薄青い膜を通したような、明かりとも呼べない朝の光
絶え間ない雨音が、微睡の世界へと呼び戻す
嗚呼、こんな日は出かけるのなんてやめにして、まもられた安全な場所でガラス越しに外の世界を見つめていられたらいい
願いも空しく、金曜日の朝の時間は過ぎる
昨日までの真夏の熱を嘲笑うような肌寒さに、ひさかたぶりに牛乳を温める
灰青色の外の世界と同じくらい低い、たっぷり注いだカフェオレの彩度
こくりこくりと喉を通して、靴を履くためのちからをためる
滑りの良い地面に肩をこわばらせつつ、どこかでレインシューズの優越感に浸るわたし
幼い頃から変わらない、同じ色のタイルだけを踏むステップが、なぜかいつもより弾んでいる、かもしれない
大きな池のできた交差点で、晴れ空の色をした海月の傘に出逢った
たっぷりの湿気と水気を吸ってきらきら輝いていた
角を曲がるととてつもない大風に見舞われた
24の丈夫な骨に守られてどっしり構えた傘を携え、胸を張ってじりりと進む
華奢な海月の彼女の無事を祈りつつ
夕暮れどき、雨の切れ間に歩く幸運が嬉しくて、閉じた傘をくるくる回す
額に触れるひんやりとした空気にマスクを外せば、どこか海に似た匂いが流れこむ
台風13号、わるくない
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?