気温19度
「19度だって!散歩に行こう。」
薄手のカーディガンを羽織って靴を履いた。早く外に出たくてうずうずする。
快適な温度、気温19度になると私はワクワクする。私には気温19度の思い出があるのだ。
「ねえ、心地よい温度だね。今何度だと思う。」
太陽が落ちて完全に暗くなった河原を私たちは歩いている。河原の涼しい風が心地よい。気持ち良い風は、生え始めたばかりの草の香りを運んでくる。夏はもうすぐそこなのかもしれない。
「16度!結構当たってる自信ある。」
彼は答えた。
「16度はこれよりもっと寒いよ。私は19度かな。」
と当てずっぽうに私は答える。なんとなく彼と同じ答えは出したくない。その方が面白いじゃん。
「普段気温をそんな見ないからわからない。確かに16度はもっと寒い気がしてきた。」
彼はいつもそんな感じだ。私とは真逆で意見を合わせてくる。予想する気温くらい、自分の意思を曲げなくてもいいのにとは思う。
「あっ。やっぱり19度だ。見ないで当てられた!私の皮膚には温度計がついているのかもね。」
「やっぱりそうだったか。すごいな。そういう時に当たってること多いよね。」
大したことでなくても、褒めてもらえると嬉しいものだ。ちょっぴり嬉しい気分になりながら、たわいのない話をする。日常にある幸せとはこいうことを言うんだと思う。心地よい夜の河原を彼と歩いたのは良い思い出だ。
気温19度になるとこの日のことを思い出す。
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