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条約は政府同士で決めるものという「常識」が変わる?! 国際プラスチック条約企業連合の話


先日、日経に「キリンやユニ・チャーム、国連プラ規制交渉の参画へ一歩」という記事が載りました。

今日は、この記事の内容を読み解いていきたいと思います。

プラスチック国際条約制定への政府交渉

海洋プラスチック汚染を始めとするプラスチック汚染が改善されない現状をふまえ、より強力な規制が必要だとの認識の高まりから、法的拘束力のある国際文書(条約)を作ろうという動きが始まっています。

これまでの規制では不十分だった

20年前にバングラデシュで使い捨てプラスチック袋を禁止する法律が施行されて以降、世界各国でプラスチック汚染対策を意図した規制が導入されてきました。過去5年間で規制の数は6割増加し、既に125カ国以上で導入されていますが、プラスチックの大量生産に起因する問題は悪化する一方です。(以上、出典は注2)

出典は注2を参照

今後の動き~2024年末までに国際条約を

従来のように、規制の導入を各国に委ねて自主的な取り組みに期待するだけではこの課題を解決できないとの認識に立ち、2022年2月~3月に開催された第5回国連環境総会再開セッション(UNEA5.2)では、決議5/14「プラスチック汚染を終わらせる:法的拘束力のある国際文書(条約)に向けて」が採択されました。

ここで、2024年末までの作業完了を目指して政府間交渉委員会(INC)を開催することが合意されたのです。(出典:注1、注2)

なお、今年(2023年)の11月13日から19日にかけてケニアのナイロビで「第3回政府間交渉委員会」が開かれ、加盟国が条文に関する交渉を本格化していくことになります(出典:注1)。


条約の”中身”づくりに企業が提言や情報提供

国際条約ができれば、その内容は世界中の企業に影響することとなります。そこで国連は、民間企業を含む利害関係者に提言や情報提供を要請してきました。

その利害関係者として存在感を高めてきたのが、2022年9月発足の「国際プラスチック条約企業連合」です。NGOの英エレン・マッカーサー財団と世界自然保護基金(WWF)が呼びかけ、多国籍企業や大手金融機関が集まっています。

キリンホールディングスやユニ・チャームなどの日本企業はこの「国際プラスチック条約企業連合」に参加しようとしています。なぜなら、同企業連合は国連のプラスチック条約交渉で一定の影響力を持っているからです(出典:注1)。


11月13日からの政府間交渉委員会に向けて

政府間交渉委員会(INC)の第1回は、2022年11月から12月にウルグアイで、そして第2回は今年(2023年)5月から6月にかけてフランスのパリで開催されました。

国際プラスチック条約企業連合は、INCの第2回で、10以上の政府代表団と二者間会談をおこなうなど主要国との関係を築きながら野心的な声明を発表しています。

このように存在感を高めている国際プラスチック条約企業連合に加入するため、その前段階として日本でも(WWFジャパンのサポートにより)も国際プラスチック条約 企業連合(日本)を立ち上げ、キリンホールディングスやユニ・チャームなどの企業はここに参加しました。

※国際プラスチック条約 企業連合(日本)の発足と、企業連合による共同声明については、下記よりご覧いただけます。


ルールを押し付けられるのではなく策定する側になれるか


国際プラスチック条約 企業連合(日本)を立ち上げ、その次の段階として国際プラスチック条約企業連合への加入を申請するねらいは、「ルールをつくる側」にまわることにあります。

各国政府は企業からの提案に期待している。条約文を詰める過程では、味方についてほしい国が賛同できるような提案や解決策が必要だ。交渉で投票権を持つのは政府だが、政府はプラスチックに詳しいわけではない。頼りになるのは企業が事業の現場で蓄積した豊富なノウハウだ。

日本が他の国や企業と連携すれば通る提案もある。したたかに動いてこそ、国際ルールは「押しつけられるもの」から「参画して勝ち取るもの」に変わるだろう。今回は重要な試金石となる。

出典は注1

この試み、ぜひ成功して欲しいと願っています!


以上、サステナビリティ分野のnote更新1000日連続への挑戦・34日目(Day34) でした。それではまた明日。


(注1)日経電子版 2023年11月10日「キリンやユニ・チャーム、国連プラ規制交渉の参画へ一歩

(注2)朝日新聞SDGs ACTION!  2023年10月24日「企業がプラスチック汚染対策の国際ルール作りに関与する! 国際条約と企業連合 WWFと考える~SDGsの実践~【15】




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