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マイ・デイアレスト・アメリカ 6

サンクレメンテは、よくサクラメントと間違えられるけれど、南カリフォルニアの海辺の街で、本当にセレブな人達が住む街。そりゃそうだ。ホームステイで数泊とはいえ、無償で異国の人間を泊めてくれる人達ばかりなのだから。生活がカツカツだったら絶対ありえない。ダッチさんの次のファミリーは、ボブとローラという若い夫婦だった。その時、ボブは確か26歳くらい、そして、ローラは20歳くらい。今から思うとホストファミリーになるには、とんでもなく若い夫婦だった。私は17歳だったから、親子というよりも、姉妹、友達という感じ。でも、ボブは独立してペンキ屋をしていた。二階建ての大きな家を、もう一組の夫婦とシェアして暮らしていた。ボブとローラの使用しているのは、二階部分。大きなリビングと大きなキッチンと寝室とバスルームとトイレ。二匹の猫がいて、客室用の部屋は特にはないが、大きなリビングの端にマットレスをひいて、そこで寝かせてもらったような気がする。でも、日本の若い夫婦の部屋からくらべると5倍くらいの広さだった。ローラは、私をサーカスに連れていってくれたり、彼女の実家に連れていってくれたりした。サーカスなんて、日本でも行ったことがなかったので珍しく、またカラフルな綿菓子に心を奪われじっと見ていると、ローラが「食べたいの?買う?」と訊いてくれたけど、別に食べたかったわけではなく、(綿菓子はどこの国でも綿菓子の味しかしないだろうし。)しかし、すごい色だなと感心した想い出がある。ローラの実家もさらに上をいくお金持ちの家で、プライベートエリアの警備万全なところにあり、そこに着くと、同じツアーの日本人の男の子が泊まっていた。そうか、親子でホストファミリーにボランテイアしてくれたのか。ローラさんのお母さんが疲れているのなら少し昼寝したらと寝室を貸してくれたが、そこは部屋の片面が鏡ハリになっていて、まるでテレビドラマの中のセットのような部屋だった。たいして眠たくなかったが、横になっていると、大きな犬が床に寝そべっていた。床にころがっていた犬のおもちゃのボールをつかむと、ワンコの目がキラリ、そこから夕食の時間まで、投げてはとりにいく、投げてはとりにいくの繰り返しのひとときを過ごすことになり、それに気が付いたローラのお母さんが、「レーダー(犬)は、あなたがいなくなるとさみしくなるわ」とジョークを飛ばしていたが、いやいや。夕食には、ローラの弟さんも加わり、楽しい宴に。弟さんのガールフレンドまで、参加してくれた。このガールフレンドがまた美人でかっこよく、何をしている人かと尋ねたら、夜空をさして、「ユナイテッド航空のスチュワーデスです。」と教えてくれた。世の中には、幸運で恵まれた人達の中には、そういう人達しか集まらないようにできているのだろうか。憧れ続けたアメリカの生活のさらに上をいくような現実ばかりしか見えてこないこの南カリフォルニアのサンクレメンテ。あのホームステイの数日間は、本当に夢のカリフォルニアでいいことしか見えていなかった。だから、また行きたいと思うようになっていまい、いつしか取りつかれてしまったのだと思う。ローラにまた会いたいな。

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