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 私の流儀 : レンダリング処理

 レンダリングとは——あるデータを処理、又は演算によって画像や映像、テキストなどを表示させる今では当たり前すぎるIT技術。身近なところではUチューブの動画やWevサイトの制作などをはじめとして様々なレンダリングがあるそうで、この領域に入るとアナログ人間の私などはもうお手上げ状態。ボロが出る前に話題から早々に引き上げようと思うのだが、このレンダリングという語句、IT用語と思いきや実はアメリカの食肉加工業の技術を語源とする事はあまり知られていないのでは?

 食肉加工のレンダリングとは——
精肉から取り除いた脂身や皮、屑肉を処理して石鹸や洗剤などの油脂・肥料・飼料などに加工する技術のことで、いわゆる循環型の環境にやさしいシステムなのだそうな。

 生来、肉の脂身が大の苦手な私。肉片の縁の白いモノはできる限り処理しているが、ある時鶏肉の黄色い脂身が飽和脂肪酸と知ってその除去作業に拍車がかかった。言ってみれば家庭版レンダリング処理という類いだが、処理したモノはゴミ箱行きとなる。
 ひたすら集中してフッと手元を見ると肉はいつも2/3ほどに目減りしている。途中から面倒になって肉も一緒に削ぎ落としてしまうから勿体ない事この上無い。
 しかしながら筑前煮や治部煮などの和食に於いてこの工程を省いてしまったら、素材の澄んだ旨みと表情が台無しになってしまうのだ。
 という事で今日の夕餉は筑前煮。鶏もも肉の脂身をひたすら取り除き終えて、フウーとひと息をついている傍らを

「バッカじゃねえの、勿体無い」と冷ややかな目つきの人が通り過ぎる。

「感謝しなさいねっ!おかげで二度目は命拾いしてるんだから」

 一度心筋梗塞を患った人に皮肉を込めて反論する。自分が嫌いだからだけでは無いのだ。

 バットの中にはピンク一色の鶏もも肉、椎茸、人参、ゴボウ、蒟蒻、蓮根が並ぶ。 
 何という栄養バランスの良さ‼︎

 手順どうり炊き上がった渾身の一品をどうだとばかり大皿に盛り付けた。


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