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江戸時代の不思議な話。ドッペルゲンガー信じますか?

前回のお話はこちら▼

こんにちは。
毎週水曜日は、ちょっと不思議なお話の日です。
今回のお話は、ドッペルゲンガー。
自分と同じ存在と出逢った事ありますか?
わたしは…。ありませんね。
出逢ったことがある人もいるみたいですが、なぜかすぐにいなくなってしまうようなんです。
ドッペルゲンガーに出会うと命を落とす。
そんな恐ろしい話もありますよね。

本編はこちら▼


昔々、江戸時代の話です。
とある田舎町に母と子が二人で暮らしていました。
父は戦で亡くなり、母が一人で子どもを養っていました。
子どもといっても、二十歳を超える男性ですが、全く働こうとしません。
毎日何かにとりつかれたように、ボーっと一点を眺めては、一日をやり過ごしていました。
母親は何か悪い病気なのか、あるいは、狐の霊でも憑いているのではないかと心配していました。

そんなある日、息子が突然、お稲荷さんをお参りにしたいと言い出したのです。
体調が悪そうな息子を見た母親は、お参りを辞めるように説得しましたが、決意は固いようでした。
体調が悪くなったらすぐに帰宅するという約束をして、息子はお稲荷さんに出かけました。

息子は無事に家に帰ってきました。
気分転換になったのか、息子の調子がよくなり、お稲荷さんにお参りに行ったことを話してくれました。
母親は、息子の体調が良くなったことに胸を撫でおろしました。

しかし、数日経つと、また魂が抜けたように、ボーっとする日々が続きます。
やっぱり何か病気を患っているんじゃないか。
何か悪い霊が憑いているんじゃないか。
そんな心配ばかりしていました。

そんなある日、息子がひと月先にある神社を参拝したいと言い出したのです。
片道一か月もかかる旅路に、体調が悪い息子を出させる訳にはいきません。
親戚一同も猛反対し、役所の人間も反対したそうです。

ある晩、母親がふと目を覚ますと、息子の姿がありません。
長い旅路に出たのかと心配になり、親戚一同で探し回りました。
しかし、どこにも見つかりません。
五日経っても、十日経っても、息子は帰ってきませんでした。

息子がいなくなってから一か月後。
胸騒ぎがし、母親が深夜に目を覚ますと、井戸の方で何やら物音が聞こえます。
井戸の中を覗き込んでみると、誰かが落ちているじゃありませんか。
暗闇の中、近くの家に助けを呼び引き上げると、そこにいたのは息子です。
井戸に落ちて、瀕死の状態でした。

母親は息子を介抱しますが、残念ながら亡くなってしまいます。
母親は悲しみに暮れ、自分が旅路を許し、同伴しなかったことを強く後悔します。
神社で遺体を確認し、土葬することにしました。
親戚一同で遺体を丁寧に葬り、土にかえしたそうです。

それから一か月後の夜。
母親が就寝しようとすると、扉を叩く音が聞こえます。
こんな夜遅くに誰だ。
眠い目をこすりながら扉を開けると、そこには…。

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