クリスマスイブに男4人ですっぽん料理を食べた
予想外の提案
「Tae-Jhinは伊勢海老食べたいって言ってたけど、張本は食べたいものある?」
「すっぽん食ってみたいですね〜」
「すっぽん!?」
今年の頭頃だっただろうか、お好み焼き屋さんでVJ AiKAの登場を待っている間、DJ Harryとそんな話をして盛り上がったことがきっかけで、自分も食べてみたくなった。どんな味がするのか、単純に気になったのである。
すっぽんを食べる日は気分がいい
有志を募り、ウケ狙いでクリスマスイブに予約をしてしまったのだが、これがなかなか良い判断だった。これほど12月24日を楽しみにしていたことはない。いざ街に繰り出しても、カップルには何の感情も抱かない。なぜなら私は、これからすっぽんを食べるのだ。
美食の国フランスでも、すっぽんのスープに「トルチェ」と名が付くほど食され、志賀直哉、芥川龍之介、直木三十五が「うまさにうつつを抜かした」と言われる高級食材すっぽんを食べるのだ。
精神的に優位になったため、光のページェントを見に行った。
綺麗だな。はやくスッポンを食べたい。
「これからどんな感じですか?ヒントください!」
「すっぽんを食べにいきます。」
キャッチも無言で逃げていく。
夜の国分町を肩で風を切って歩く。王者の風格である。
入店
空腹と寒さでモンハンだったら死んだほうがいい状態だったため、さっさと入店した。
政治家が裏取引するような場所だった。白竜で見たことがある。明るい和服姿のアニメ声の可愛らしい店員さんに案内され、完全な個室に腰を下ろす。
若い女性は若いだけで価値があるが、年を取ってから何が残るか、そこが重要だ。愛される女性特有の品位、愛嬌、色気は、若さが去った後むきだしになる。いまから磨き上げて、10年後に後悔しないよう頑張ってください、と心の中でエールを贈った。
こんなことを考えてしまったのは、店員さんが正座で礼をしてから入室するからだ。作法として少々やりすぎな気もする。しかし気分は悪くない。
前菜
鴨肉、卵焼き、胡麻豆腐、湯葉。
どれも丁寧な料理で、普段どれだけガサツな食事を取っていたのか痛感してしまった。一枚一枚ほどける湯葉は初めて食べた。わさびも勿論わさび芋を擦った生のもので、香りがよく刺激がマイルドで湯葉とよく合う。
三陸産刺し盛
この時点で大変満足してしまった。
どれも食べたことがないレベルの良い状態の魚だったが、特筆すべきは中央に鎮座する銀色のアジである。臭みがゼロだった。これは衝撃的なことで、全然臭くないですね、と褒めるアジ刺しは個性程度に臭みが残っており、それも良さだと認識していたが、臭みがゼロなのは流石に初体験であった。
アジの臭み消しのために生姜が添えられるものだが、これは醤油のみでも十分いける。というか塩で食べてみたいと思えるほど、本当に臭みがなかった。釣りものをしっかり血抜きするのかな…。
すっぽんの生き血(ワイン割り)
叶姉妹が飲んでるのテレビで見たことある!
味はワインでした。血の味は正直わからなかった。
すっぽんは生きている個体でないと味が悪くなり食べれないらしく、いま締めましたよ、の証明として出される品なのかな?なんだか儀式的で、食事としてどうなのだろう、と疑問が残ってしまった。
胆嚢、心臓、腎臓(たしか)
それぞれ効果があり、身体にいいので、噛まずに飲むらしい。
4人で来店したので、じゃんけんで決める。
最初に負けてしまった。
お預けです。
グロテスクなもの避けられてラッキー、と思うことにした。なんにせよコースの値段が高いため、これを頂けなかったのはけっこう損した気がする。
すっぽんの刺身
肩身、レバー、甲羅まわりの部位。もみじおろしポン酢で食べる。
いよいよだ。これを食べに来たのだ。
急いで赤身を口に入れ、ウオッ、と唸ってしまった。めちゃくちゃうまい。
鶏肉のようだ、というレビューをよく目にしていた。食感は確かに鳥刺しに近く、味わいも似ている。しかし、味は違うのだが、貝出汁や鰹節と同じ系統の、海鮮系の強烈な旨味がある。なんだこれは。不思議な食べ物だ。
レバーも独特で、こちらも鳥豚牛のレバー味と、魚介の肝の中間の味がする。脂の溶ける温度が人間の体温に近いせいか、噛めば噛むほどに濃厚な味が出てくる。対して生臭さや血の匂いはしなかった。
甲羅の周りも美味だった。コラーゲン質でぷりぷりしており、口溶けよく、しっかりと味がする。ふぐ皮や鯨のオバケのような食材は、それ自体に味がないためポン酢を食べる素材のような感覚があるが、まったく別物であった。
すっぽん鍋(メイン)
生で食ってうまいのだから煮てもうまいに決まっている。
思っていたよりも上品な味だった。
火を通すと、かなり魚類の身質に近くなる。煮魚で食す機会の多いブリに似ている。その魚類系の身質と、コラーゲンでプリプリ身質の2種類楽しめる点も、すっぽんの魅力なのだなと思った。
かなり骨っぽいが、歯を使わなくても口の中で完全に分離する。身離れが良さが究極であった。食べやすさも大切なポイント。
甲羅は食えないため、食べ進めていくと急激に亀感が出てくる。
この後、雑炊にしてシメる。これもかなりあっさりしていた。余韻を噛み締めながらすすりこぼす。
大満足だった。
なぜ養殖してまで亀を食べるのか不思議でならなかったが、食べてみるととても納得できる。うまいからである。人間にとって都合の良い生き物だ。
すっぽんといえば滋養強壮
拍車をかけるべく、親方特製スタミナ薬膳酒を注文した。
ふぐのテドロトキシンを加えれば日本の毒が揃うようなラインナップ。
これがお世辞にも美味しいとは言えないのだが、飲んだ瞬間意識がハッキリして目が覚めてきた。なんでだ。これは効きそうだな。
なんにせよ、年の瀬に騒がしくない店ですっぽんを食べるというのは、不思議と慰労の気持ちが湧いてくる。みんな今年も一年よく頑張りました。来年もすっぽん食べれるように頑張ろーっと!
今回のお店はこちら↓
仙台料理 ほんま
ご馳走さまでした。
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