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瑞原明奈流「ゴリラ麻雀」とは何か

前回の記事(↓)で「瑞原明奈こそがMリーグである」の続きを書くと予告したまま、体調を崩してしまい、頓挫してしまった。

瑞原明奈はMリーグそのものである(1)|カイエ (note.com)

そんな中、我らがアッキーナは、直近の対局を1着・1着・1着・4着・4着・2着と推移し、依然MVP争いの真っ只中に君臨している。
そして今期は、その活躍がクローズアップされるにつれ「ゴリラ麻雀」という謎のワードもタイムラインで目立ち始めた。

特に、あわや自身3連敗(3ラス)という絶体絶命のオーラスで、フリテン三色の倍満を決めて見事2着に浮上した2/15の第1試合後には、ゴリラ🦍ゴリラ🦍うっほ🦍うほ🦍と、ゴリラ界隈による祝福と雄叫びとドラミングの嵐だった

では、瑞原流ゴリラ麻雀とは何か。
われわれはその秘密に迫るべく、ジャングルの奥深くへと潜り込んでいったのだった。うっほ、うほ、うほほ🦍🦍🦍。

まずは件の「ゴリラ麻雀」なる概念の出所から。

「ゴリラ麻雀」って何?麻雀IQは「80くらい」?人気女流雀士が爆笑謎ワードを連発「また新しい麻雀がw」/麻雀・Mトーナメント | ニュース | ABEMA TIMES | アベマタイムズ

おそらく初出は上記、Mトーナメント開催中の2023年6月19日だと思われる。いみじくもあれから、ちょうど8か月が経とうとしているわけだ。だからどうした。ちなみにリンク先の瑞原のインタビュー画像のキャプションとして「謎な言葉を並べる瑞原明奈」とあるのが面白い。珍獣扱いか、文字通り。

さらに、より詳細にゴリラ麻雀について本人が証言している映像が配信アーカイブとして残されている。ここでは有志による切り抜き動画を貼っておこう。

【雑談】ゴリラ麻雀の定義について語るミズちゃん【ミズハラちゃんねるpick up】 (youtube.com)

正直、本家本元による、かかる言及ですべてという感じがしないでもない。しかし、瑞原自身が冒頭「ゴリラの定義についてそのうち論文を書こうか」と述べている通り、以下ではその助けとなるべく私なりに補助線を引いておこう。

さて、Mリーグでの直近対局におけるゴリラの好例として瑞原は、チーム雷電・黒沢咲のナイスゴリラについて言及している。
親リーに対してノーテンの状態から危険牌の6ソーを打ち出すという、平面的・期待値的には損な選択がそれだ。
この局面を突破しさえすれば、トップへの道が拓かれるという勝負所。ここでセレブな黒沢の、美しいナイスゴリラな押しが出現するのだ。まずはゴリラとは、この攻撃姿勢のことを指す。

重要なのは、常に脳死でうほうほと攻撃的な麻雀を打つことが、=ゴリラ麻雀ではないということだ。
勝負所を的確に見極め、そのゲーム(半荘)を勝ち切るために、知識や経験などから得たクレバーな判断基準を脱して、敢えて数字上の得・期待値に鈍感になってみせること。その勝負姿勢を総称して、瑞原はゴリラと呼んでいるのである。
では、なぜゴリラなのか

それはIQを計測できるネットゲームにおいて、瑞原自身が「IQ80」という記録を達成したからだ。こちらも実際のプレイ映像が残っているが、その結果を示すページに「ゴリラの平均IQは70~95といわれている」と注釈がある。だから、真の初出はこれなのだ。ここに、瑞原が提唱するゴリラ麻雀との幸福な出会いがあった。2023年6月1日の配信だから、冒頭のインタビュー時期とも合う。自分のIQがゴリラ並みだと診断されたという哀しき事実を恨みがましく覚えていたことが、そう頭の良くないようにみえる(=低IQ)、強気で攻撃的な自身の選択を指して、ゴリラ麻雀であるとインタビューしてみせたのだった。そして、それが謎のワードと報じられてしまった。そりゃあ、そうだ。前提を共有していなければ、ゴリラのワードチョイスは唐突に過ぎる

もう少し見ていこう。
前述の配信において「誰がゴリラ仲間か?」という話題で、何人かのMリーガーの名前が挙げられていくのだが、元祖ゴリラは佐々木寿人だという。今でこそ攻撃と守備の見切りを洗練させ、かつての「麻雀攻めダルマ」や「ガラクタリーチ」は控えめになっている寿人だが、観る雀の頃に憧れの的であった彼の麻雀に、すでに瑞原はゴリラの影を見ていたのだろう。
ところで私見では、ゴリラ麻雀に最も近いのは「ボディ麻雀」だろう。最強戦の前原雄大の麻雀から日吉が名付けたとされるボディ麻雀。
頭でなく、体で打つこと
頭=脳=IQとすれば、ボディ=ゴリラという等式は容易に成立する。
そしてこの系譜は、Mリーグでの裸単騎に象徴される高宮まりにまで至る。前原‐佐々木‐高宮という格闘倶楽部ラインは、ゴリラ的なエッセンスを確実に受け継いでいる。

また本田朋広は、今シーズン(2023-24)の最初あたりはゴリラだったと語っている。去年、本田自身の原動力となったフラフラ打法や鈍感力は、確実にゴリラのセッセンスを纏っているだろう。

この一連の「ゴリラ仲間探し」において重要なのは、
勝又さんはあんまゴリラと思ったことはない
という陰口すれすれのミズちゃんの証言だ。
考えれば当たり前である。むろん、勝又の二つ名が「麻雀IQ220」だからだ。低IQ打法のゴリラ麻雀は、そもそもがIQ220へのアンチテーゼともいえる。

また、ゴリラ麻雀は、赤坂ドリブンズ・渡辺太の「麻雀はガッツ」という名言とも異なることも確認しておこう。
瑞原自身も「ふとっしーはゴリラというより、精密で、逆にIQ300みたいな」と述べている。
確かに、一見ドギツイ牌を残り筋の本数を数えて押し切る姿は、道具を使うことを覚えたてのゴリラのような、勇猛果敢さに溢れている。しかし、あくまで彼は期待値の枠内で、放銃率と和了率の相関・損得を見定めている。根底にあるのはとつげき東北『科学する麻雀』以降の思想であり、麻雀AI時代の局収支MAX打法であり、赤坂ドリブンズ的期待値主義だ。ゴリラ麻雀はそういうことではない。むしろ逆であることが、今や分かるだろう。そもそもが渡辺太は豚なのだ。

ちなみに、こちらもゴリラ味のある押しをしばしば披露する同じパイレーツの鈴木優は、これは瑞原本人の見立てとは異なり、どちらかといえばガッツ派閥に属するだろう。日常的なIQはゴリラなのかもしれないが(失礼)。

いずれにせよ、ゴリラ麻雀というのは包括的に、ひとつの麻雀戦術理論としてあるわけではない。むしろ、たまに発動するからこそ有効で、終始ゴリラではさすがに人間には勝てない。もちろん手牌や局面とのタイミングもある。発動しようともできない状況はいくらでもある。そもそも初出としたインタビーで瑞原は「ゴリラモードで」と述べている。発動するのがモードだ。ゴリラ麻雀とは勝負という流れの中に勝ち筋を求めて、その瞬間だけ変身する「モード」のことなのだ。
すると、こうも言える。
ゴリラ麻雀とは勝負術のことだ。IQに代表される理性を取っ払い、大局観により勝負所で踏み込む力強さ・勇気。そうした姿勢だったりモードだったりがゴリラ麻雀の正体なのだ。だから、ある意味では感覚派の麻雀に近いといえるかもしれない

最後に辞書的にまとめておこう。

ゴリラ麻雀:
Mリーガー瑞原明奈が提唱する、麻雀におけるモード。勝負所を的確に見極め、そのゲーム(半荘)を勝ち切るために、知識や経験などから得たクレバーな判断基準を脱して、敢えて数字上の得・期待値に、鈍感になってみせること。その勝負姿勢。
対義語:インテリ麻雀
類似語:ボディ麻雀
使用例:
Xユーザーのカイエさん: 「フリテンツモゴリラ倍満!🦍」 / X (twitter.com)

以上。

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