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僕にはむかし翼があった

 翔太はある病気がもとで、今は足がふらつき、どうしても前屈みで歩いてしまう。むかしは、スポーツも万能で、颯爽としていたのに……
 どうしても伸びない背中を鏡にうつし、今朝も溜め息をついてしまった。

 そんな翔太に対し、友人も周りの人達も優しく気遣ってくれる。
だけど僕が僕を許せないんだ。情けなくなってしまったことに。

 自分でも本で調べたり、体操をしたり、工夫はしているんだ。
筋力アップもしているし、視線が大切だと聞けば、試しているし……

でも、どうしても変わらない。

 そんなある夜、不思議な夢を見た。僕の周りを天使たちが飛んでいる。
屈託なく笑い、自由にのびのびと。そんな姿をぼんやり眺めていたら、1人がこちらを振り向いた。

 なんとその顔は小さいころの僕。

 僕はもともと天使だったんだ。

 あまりの驚きに、思わず目が覚めてしまった。

 そうっと自分の背中を撫でてみる。もちろん翼はなかった。でも不思議なことが起きたんだ。

 歩く時、翼のあった部分を意識すると背中が伸びた。空を飛んでいた感覚で足の裏と頭頂を意識すると、身体の軸が定まってきたようだ。

 そしていちばん変わったのが、気持ちだ。空を飛んでいた楽しい気分で、自分のペースで進んでいこうと考えるようになった。

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