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マーケティングのゴールを設定する

マーケティングとは?狭義と広義のマーケティング

マーケティングという言葉は多義的で、その定義は人によって異なることがあります。コトラーの定義に従った広義のマーケティングと、宣伝部的な狭義のマーケティングの区別は重要です。広義のマーケティングは、顧客価値の創造から顧客獲得、維持、育成までを包括するビジネス機能として捉えられます。一方で、狭義のマーケティングは、主に広告や宣伝活動に焦点を当て、顧客の獲得と維持に限定されます。

両者の違いを理解することで、マーケティング部門が取るべきマーケティング戦略やアプローチを適切に選択できるようになります。広義のマーケティングは、市場調査や顧客ニーズの分析から商品やサービスの開発、価値提供までをカバーするため、戦略的なビジネス活動の一部として位置付けられます。一方で、狭義のマーケティングは、主に広告や宣伝を通じて商品やサービスを市場に認知させることに焦点を当て、顧客獲得に重点を置きます。

どちらのアプローチも重要ですが、企業が成功するためには両方の視点をバランスよく組み合わせる必要があります。顧客のニーズや市場の動向を正確に把握し、それに合った戦略を展開することが重要です。また、狭義のマーケティングが広義のマーケティングの一部であることを理解し、広い視野でマーケティング活動を展開することも大切です。

ゴール設定は広義のマーケティングの視点で!

マーケティングのゴール設定は、マーケティングの定義や理解に大きく影響を受けます。広義のマーケティングの視点からゴールを設定することは、顧客志向の姿勢を持ち、顧客価値を最大化することに焦点を当てるため、組織全体の成功に貢献することが期待されます。


人材業を例に考えてみましょう。求職者がサービスに登録してから、実際に転職をして売上として認識される入職までの5つのステップを考えると、狭義のマーケティングの視点からは登録の最大化がゴールとして考えられます。しかし、広義のマーケティングの視点からは、単に登録の最大化だけでなく、顧客のニーズを理解し、それに応じたサービスを提供して顧客満足度を高め、最終的により多くの人に自社のサービスを使って転職をしてもらうところまで責任を持つ姿勢が重要です。

マーケティングの地位が低い原因として、狭義のマーケティングの定義で業務を行っていることが挙げられます。日本企業においては、広義のマーケティングの理解や実践が不足している場合があり、その結果、マーケティングがビジネス全体に与える影響や価値が正しく認識されていないことがあります。

したがって、マーケティングのゴール設定や活動の展開においては、広義のマーケティングの視点を持ち、顧客価値の最大化や顧客満足度の向上、長期的な顧客関係の構築に重点を置くことが重要です。これによって、マーケティングが組織全体の成功に貢献し、その地位を向上させることができるでしょう。その実践のための具体的な方法として、以下では2つの視点を提供します。

マーケティングのゴールと売上・利益の連動性を高める

マーケティングのゴール設定において、営利企業であることを考慮して売上や利益の最大化を重視することは重要です。つまり、狭義のマーケティングのゴール設定ではなく、事業の長期的な成長や顧客価値の最大化を考慮する必要があります。

例えば、人材紹介のビジネスでは、登録者数の増加だけでなく、入職率の向上や顧客満足度の向上など、入職者数の増加と結びつく要素を含めてゴールを設定することが重要です。入職転換率の向上が登録者数の増加と売上の増加に直結するため、マーケティングの活動が事業の成果に貢献することが明確になります。

また、よく広告宣伝活動の目標指標としてブランド認知度を利用しているケースなどがありますが、これも売上との連動性が低いということで問題委があります。実際の売上との関連性を考慮したゴール設定が重要です。特に、長期的に事業を継続していく場合やダイレクト型ビジネスにおいては、単純なブランド認知度だけではなく、顧客の行動や売上への影響をより具体的に評価する必要があります。

マーケティング部門の評価と地位向上のためには、自分たちの活動が会社の事業成果に貢献していることを証明することが重要です。そのためには、売上や利益だけでなく、顧客価値の最大化や事業の成長に貢献する要素を含めたゴール設定や評価指標の導入が必要です。

マーケティング部門が消費者・顧客の利益代弁者となる

マーケティング部門が消費者や顧客の利益を代弁することは重要です。ただし、これは短期的な売上追求とは異なります。特に人材紹介業のようなサービス業では、求職者や転職者の長期的な利益を考慮することが重要です。

例えば、求職者が次のキャリアステップを考える中で、その人の経験やスキル、ワークライフバランスのニーズに合った転職先を提案することは、その人の利益を代弁することになります。一方で、短期的な目標である月次の売上目標を達成する目指す営業部門の視点に立てば、求職者のニーズや長期的なキャリア目標を無視して転職を急がせることは売上の計上という視点では理にかなっています。このような相反する利害の中で、短期的な企業利益を追求しすぎることは、長期的な信頼や顧客満足度に影響を及ぼす可能性があります。

このような状況においてマーケティング部門が消費者や顧客の利益を代弁者となり、顧客の中長期的な利益を担保するための役割を果たさなければなりません。このためには、営業部門との連携が欠かせません。具体的な提案として、営業活動のKPIに顧客満足度や早期退職率などの顧客の利益を反映した指標を導入することが挙げられます。これにより、営業活動が単なる売上追求ではなく、顧客の長期的な利益を考慮した行動に繋がる可能性があります。

また、マーケティング部門が顧客の利益を代弁するためには、経営陣や他部門とのコミュニケーションも重要です。特に、営業部門が短期的な売上目標に追われる中で、マーケティング部門が顧客の長期的な利益を考慮した提案や行動を行うことが必要です。経営陣や他部門とのコミュニケーションを通じて、顧客の利益を最大化することが企業の長期的な成長につながると認識されるようになれば、マーケティングの役割も評価されやすくなるでしょう。

マーケティング部門が顧客獲得だけに焦点を当てると、確かに成果は得られるかもしれませんが、その成果が持続的でない場合があります。長期的なビジョンを持ち、顧客のニーズを理解し、それに基づいて戦略を立てることが重要です。顧客獲得だけでなく、顧客の維持やロイヤルティの向上、顧客体験の向上なども重要な要素です。

自部署のゴール設定が狭義のマーケティングの範囲にとどまっているかどうかを確認することは、重要なステップです。他の部門との連携を強化し、全社的な視点でマーケティング活動を展開することが、成果を最大化し、マーケティング部門の地位を向上させるための鍵となります。

【この文章は以下の文章のライトバージョンです。より詳細な議論はこちらでご確認ください】


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