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中長期視点でのオペレーションとリスクコントロール

市場と自社の成長スピードのバランスを確認する

今回は、デジタルマーケティングにおける中長期的なオペレーションとリスクコントロールについて詳しく説明したいと思います。

まず、デジタルマーケティングの成功には、小さな失敗を素早く行うことが重要ですが、中長期視点で現状のPDCAが適切なスピードで回転し、そのために適切な失敗が行えているのかをマーケティング責任者は正しく見極めなけなければいけません。また、マーケティングの効率は需要と供給によって決まるため、事業計画の実現性を高めるためには現状を正しく理解したうえで、中長期の事業計画の実現に向けた備えを行っていく必要があります。

中長期の事業計画の実現性の検討においては、まずマーケットの需要成長率と自社の成長率のバランスが重要です。当然マーケットの需要が成長していれば、その事業ではターゲット顧客が増大するため成長しやすい環境にあると思います。ただし、成長セグメントにおいては急成長を維持できる可能性がある一方で、新規参入や市場全体のマーケティング費用の増大によってマーケティング効率が悪化する可能性も考慮に入れておく必要があります。

一方で、多くの企業では市場の成長率よりも速い成長を求められる場合があり、このような場合にはマーケットシェアの拡大が重要です。マーケットシェアの拡大には様々な手法が考えられますが、もし自社に対競合比で資金面などで余裕がある場合には、一時的なマーケティング効率の悪化を許容し顧客獲得単価の引き上げによる体力勝負を挑んだり、M&Aなどの手法で市場シェアを拡大することも検討可能です。

中長期的なオペレーションとリスクコントロールを考える際には、自社の成長スピードと市場環境の変化に応じて適切な戦略を立てる必要ですが、以下では、マーケティングの責任者が、市場の成長を超えて自社事業を中長期的に伸ばす際に考えなければいけないことを議論していきます。

自社のマーケティングがどの程度安定しているのかを把握する

前述したように、資金力が競合対比で強い企業が高額な顧客獲得単価での消耗戦やM&Aなどの戦略を取ることができると指摘していますが、本議論では戦略レベルではなく、オペレーションレベルでのアプローチに焦点を当てています。

デジタルマーケティングのオペレーションでは、PDCAサイクルのうち、特にDCAの3プロセスに注力し、競合との差をつけるための高速回転が重要であることはこれまで述べてきた通りです。そして、PDCAの高速回転には、小さな失敗を早期に行うことが不可欠です。

マーケティング部門の責任者が考慮すべき重要な点は、現在のPDCAの回転スピードと精度が将来の成長スピードに適しているかどうかを判断することです。自社が市場の成長スピードよりも速い成長率を要求される場合、競合よりも早くかつ精度の高いPDCAが求められるとしています。

この場合、重要なのは、自社のデジタルマーケティング施策のパフォーマンスの安定性です。PDCAが十分に行われている場合、マーケティング施策や広告のアカウントは安定したパフォーマンスを示すと述ます。しかし、PDCAが不十分な場合、パフォーマンスの不安定さや変動が生じた際の説明が困難であることが多いと経験上言えます。

中長期視点でのPDCA=事業成長スピードに合わせて安定部分を増やす

自社の広告のアカウントの安定性の理解をしたうえで、さらに詳細な分析に移行します。自社のマーケティング活動や広告アカウントを細分化し、それぞれの施策や広告のパフォーマンスを安定性の観点から分類することをお勧めします。そのうえで、安定性の高い施策と不安定な施策を識別し、将来の成長目標に向けて戦略を立てる方法を考えたいと思います。

具体的な例として、現在のマーケティング予算が1000万円であり、来年の成長目標が月平均1200万円である場合を考えます。現状の安定性の高い施策と不安定な施策を分類し、安定性が90%、不安定性が10%とします。この状況で、来年の目標を達成するための戦略を考える必要があります。もし現状から来年にかけてPDCAが十分に回らず、自社のマーケティング活動のクオリティが来年も向上していないとすれば、安定部分の900万円が維持され、不安定部分は300万円と全体の25%に増えることになります。当然不安定な部分の目標達成率は低くなるリスクがあるため、来年度のマーケティング活動の実現確度は今年よりも低くなるリスクが増すということになります。このため、マーケティングの責任者は、来年の予算増に対して、安定部分の金額を増やしていく方法を検討していかなければいけません。

一つ目の戦略は、安定している施策に予算を増やすことです。しかし、これはリスクが伴います。なぜなら、既存の顧客セグメントに対して接触が飽和状態になっている場合、予算を増やしても収益が増えるわけではなく、単にCPAが上昇するだけになる可能性があるからです。

二つ目の戦略は、不安定な施策を安定性の高いものに昇格させることです。これにより、将来的な予算拡大の余地が生まれます。不安定な施策には実験やテストを行い、安定性を向上させる方法を見つけることが重要です。自社のPDCAの高速回転というのは、実はこの不安定から安定への転換をどれだけ多くできるかを考えて実施していると考えられます。

PDCAサイクルを通じてマーケティング活動の精度を上げ、安定性を増やすことが重要であると強調しています。中長期的な視点を持ちつつ、現在のPDCAの回転スピードが適切かどうかを検証し、競合との差を維持・拡大することがマネジメントに求められると述べています。



【この文章は以下の文章のライトバージョンです。より詳細な議論はこちらでご確認ください】


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