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負けヒロインにはなりたくない!けど…



いつもより少し静かな教室

まだ揃わないクラスメイト

今日は元気な天気で晴れ

しかも隣にはわたしの好きな彼

朝からとても気分が良い

咲月:〇〇…朝だね…

〇〇:そうだね朝だなぁ…

こうしてまったりとホームルームまで過ごす

〇〇:もう帰りたいわ

咲月:分かるすごい帰りたい

こんな風に〇〇と朝まったりと過ごすようになったのはいつからだろう

思い返すと

……中学生の頃からかな

〇〇とは幼なじみで小、中、高と学校は同じ

クラスまでもが同じ

離れたのは中学1年生の1年間のみ

その頃から〇〇のことは既に好きで

クラスが離れてしまい

話す時間が少なくなってしまう!!

と危機感を持ったわたしの発案により始まった

そこから高校2年の今でも続いている

咲月:ねぇ?〇〇?

〇〇:なに?今は日光に当たりながら数学の時間にする内職について考えてるんだけど

咲月:内職はだめだよ

〇〇:咲月は真面目すぎるんだよ

〇〇:あの先生何も言ってこないから良いんだよ

咲月:それじゃあもう数学教えてあげないよ?

〇〇:えぇ…それは困るな…

咲月:じゃあしっかり受けようね

〇〇:仕方ない…

わたしはこうやって〇〇とする何気ない会話が好き

落ち着くし

安心するし

マイホームって感じがする

これも長く一緒にいるからかもしれない

キーコンカーンコーン

咲月:あ、ホームルーム始まるね

〇〇:そうだね

〇〇:よし数学の時間は読書タイムにしよ

咲月:だめだよ!

あぁ今日もあそこは夫婦してるね

そうだね熟年夫婦だ

もう結婚してるよな

こんな声もしばしば

咲月:……えぇ…?恥ずかし…

〇〇:17だからまだ結婚できないのにね

そこじゃないと思うよ

わたしは夫婦でもいいんだけどね?

嬉しいし好きだから

でも〇〇は気づかない

〇〇:じゃ今日の担任の授業は口癖の「オーケッ?」って

〇〇:何回言うか数えることにした

咲月:授業はちゃんと聞こうね

〇〇:やだつまらないもん

〇〇:それなら咲月と喋る方がいいわ

咲月:えぇ…急に…

ほのぼのする感じ

こんなの〇〇と一緒じゃなきゃ感じれないね

休み時間だって

〇〇:ねぇ咲月

咲月:なに〜?

〇〇:数学のノート見せてよ

咲月:また聞いてなかったの?

〇〇:違うよ動画見てたの

咲月:聞いてないじゃん

〇〇:咲月が一番頼りになるから

〇〇:お願い?

咲月:仕方ないなぁ…

〇〇からの信頼が高いのがやっぱり嬉しい

お昼だって

咲月:〇〇〜もうお昼ご飯だよ〜

咲月:いつまで寝てるの!

〇〇:んん…もうお昼…?

咲月:そうだよほら食べよ!

うまんま

咲月:わたしももっと料理できるようになりたいな

〇〇:咲月はできなくても大丈夫だよ

咲月:なんで!?家事できなきゃだめでしょ!

〇〇:うん、咲月は大丈夫

咲月:絶対できるようになるもん

〇〇:できなくても良いんだけどなぁ

やっぱり放課後まで一緒

咲月:ほら〜帰るよ〜

〇〇:待ってよ準備が早いよ

咲月:朝は早く帰りたいって言ってたのにね〜

〇〇:今は帰るのがだるいんだよ

咲月:ほら一緒に帰ってあげるから

〇〇:毎日帰ってるじゃん

咲月:いいから〜

咲月:お手々繋いで帰ろうね〜

〇〇:嫌だ!

咲月:そんなに拒否しなくても…

でもこんな日常が好き

わたしの日常は〇〇とセット

ハッピーセット

量も質も完璧にしたい

だからビックマックくらいの満足感ある関係になりたい

なにが言いたいかのかそれは…付き合いたい

告白をするかどうかは迷っている

もし振られたときのことを考えたら…

朝もだし〇〇といられる時間がなくなってしまうかも

そう考えたらできない

_________

ある日のこと

今日も〇〇とホームルーム前にまったりしていた

すると〇〇がこんなことを言い始めた

〇〇:咲月ってさ

咲月:ん?

〇〇:咲月ってなんか負けヒロイン感があるよね

咲月:え?負けヒロイン?

〇〇:そう負けヒロイン

咲月:わたしが!?

〇〇:ちょっと声大きいよ

咲月:ご、ごめん…

咲月:負けヒロインってどんな感じなの?

〇〇:そうだね…いきなり転校してきた女の子に好きな人取られちゃうみたいな?

咲月:え…嫌だな

〇〇:でも咲月はそんな感じがするんだよ

〇〇:なんか負け顔が似合いそうなんだよな

咲月:負け顔…?

〇〇:こんな感じの顔

咲月:こう?

〇〇:そうそう!

〇〇:まさに!

咲月:そんなんでテンション上がんないでよ

〇〇:昨日見たアニメの負けヒロインキャラが

〇〇:咲月にそっくりでさ

咲月:わたしは正ヒロインがいいよ〜!

咲月:報われたい〜!

キーンコーンカーンコーン

〇〇:あぁもう…こんな時間か

咲月:あ、授業はちゃんと聞こうね

〇〇:えぇやだ…

先生:はい!みんな注目して〜

咲月:なんか先生来るの早くない?

〇〇:確かになんか緊急かな

先生:え〜と転校生です

先生:カモン!

咲月:先生テンション高っ

ガラガラっ!

先生:はい自己紹介をお願いします

和:井上和です

和:神奈川県からきました

和:よろしくお願いします

咲月:か、かわいい…

先生:じゃあ席は〇〇の隣ね

先生:ほらあそこ

和:はい

こうして超絶美少女が転校してきた

〇〇:よろしくね井上さん

和:こちらこそよろしくお願いします

咲月:そんな固くならなくていいんだよ

咲月:だって〇〇だからね〜

〇〇:おい、咲月それは失礼

咲月:わたしは菅原咲月ねさっちゃんって呼んでね〜

和:さっちゃんよろしく!

こうしてうまく打ち解けることができた

気づけば

咲月:おっはよ〜和にゃ〜ん!

和:やめてよさっちゃん!

咲月:ほら今日もにゃんにゃんして〜!

咲月:かわいいね〜

和:もう!

短期間でこんなにも仲良くなってしまった

咲月:こんなに短い間で仲良くなるとは思わなかった〜!

和:そうだねさっちゃんがぐいぐい来てくれたおかげだね

咲月:へへへ…嬉しい和に褒められて

和:あ、そういえば今日席替えするらしいよ

咲月:そうなの?

和:先生が言ってた

咲月:和と近くになれるかな〜

和:わかんない〇〇くんも近くがいいな

咲月:〇〇も?確かにこの3人で近くになれたらいいね

席替え後

咲月:ぐわぁぁぁ…

咲月:なんでわたしだけ…

和と〇〇は窓側で隣同士

わたしは見事に逆サイド

和と遠くなってしまった

そしてなによりも〇〇と遠い!

授業中に〇〇の顔を見れない

〇〇の寝顔

〇〇のボケーっとした顔

〇〇の真剣な顔

咲月:わたしが独占してたのに…

羨ましがっているけど

別に朝の時間はなくなるわけではないし

お昼ごはんも帰りも一緒だし

そんなことを思っていると

ふと思い出した

”咲月ってなんか負けヒロイン感があるよね”

”いきなり転校してきた女の子に好きな人取られちゃうみたいな”

はっ!とした

今の状況

わたしは負けヒロインだ!と

和がきっと正ヒロイン

でもわたしが〇〇にとってのヒロインでありたい

なるべく〇〇の近くに

〇〇を離さない

わたしは負けヒロインにならない!

そう意気込んで〇〇の方をみると

和:ふふっ…

〇〇:ははっ…

笑い合う2人

に込み上げる不安

きっと大丈夫だと思ってた

だけど…

_________

ここ最近〇〇と和の距離が近づいている

物理的な距離に合わせて

心の距離も

授業中は必ず2人の様子を見てしまう

隠れて笑い合ってるとことか

仲良くペアワークしてるとことか

問題を教えあってるところも

咲月:うううぅ…ずるいぃぃ…

〇〇が取られてる…

咲月:ぐぬぬ…

どうしたら〇〇にもっと菅原咲月を見てもらえるのか

考え抜いた結果

もっと話しかけるなどのアピールを増やそう

菅原咲月の心の中委員会で決定した

だがそう上手くはいかない

まず話しかけようとすると

咲月:よ〜し〇〇〜!

女:あ!菅原さん!

咲月:ん?

女:先生が呼んでたよ!

咲月:え?分かった!

このように邪魔が入る

逆に話しかけれても

咲月:どう〇〇?授業はちゃんと聞いてる?

〇〇:ちゃんと聞いてるよ最近は

咲月:そっか…

聞いてるならなにも言えないな…

咲月:じゃ、じゃあ!ノートは!?書いてる!?

咲月:見せようか!?

〇〇:え、咲月からなんて珍しいね

〇〇:でも最近は書いてるし和にも見せてもらってるから

咲月:……和!?いつから!?この前は井上さんだったじゃん!!

〇〇:咲月が和と仲良くなるのと同じで僕も仲良くなってるんだ

咲月:くっ…いつの間に…

〇〇:友達が増えて嬉しいなぁ

てか元々わたしが見せてたんですけどぉ!?

このように

ヒロインとの関係の進捗状況の報告に焦るばかり

焦るエピソードといえば

和と話していると

咲月:わたし〇〇にね数学教えてるんだよ

和:え…?〇〇くんめっちゃ数学できてるけど…

和:さっちゃんが教えてるの…?

咲月:定期テスト前とかにね

〇〇:最近は数学の点数が伸びてるんだぁって言ってたけど?

そういえば最近は教えてないな

和と問題教えあってるから…!?

っ…!和の方が教えるのが上手いんだ…!

もうわたしじゃなくていいじゃん…

咲月:はぁ…

和:あっ!さっちゃんどこ行くの!

和:どうしたんだろ…

2人の口から出てくるのはわたしの知らない話ばかり

しかも全部のエピソードで和に負けてる

負けヒロインを意識すればするほど

自分が負けていく

動けば動くほどはまる蟻地獄みたいに

わたしは本当に負けヒロインなのかもしれない

_________

わたしは負けたくない

〇〇にとっての正ヒロインになりたい

だからあえて離れてみることにした

〇〇から遠くにいれば勝負に参加しなくてすむかもしれない

そう思い少しずつ距離を離していた

そしてここ数日〇〇が朝迎えに来るようになった

〇〇:咲月〜学校行こ〜

咲月:ごめんっ!先行ってて!

〇〇:え?1週間ずっとになるけど…

〇〇:大丈夫…?

咲月:うん!大丈夫!

〇〇:分かった

……

〇〇:……咲月がいないと朝じゃないなぁ


〇〇:ねぇ咲月

咲月:ん?

〇〇:お昼一緒に食べようよ

咲月:ごめんちょっと用事が…

〇〇:そっか分かったよ

〇〇:なんだろう…

〇〇:咲月がいないだけなんだけどな…

放課後

〇〇:和聞いてよ

和:ん?どうしたの?

〇〇:咲月が最近僕から離れてる気がする

〇〇:なんか嫌なんだけど

和:〇〇くんはさっちゃんのこと好きなの?

〇〇:ん〜…でもどうだろ…

〇〇:隣にいるのが当たり前だったし

〇〇:最近隣にいなくて物足りないっていうか

和:好きじゃん

〇〇:好きなのかな?

和:うん、好きだよ

〇〇:確かに…

〇〇:うん…そうかも…

〇〇:やっぱり好き…だな…

好きなんだな…

ガタッ!

なにかがドアとぶつかった音がした

咲月:ご、ごめん!ダッダッダッ!

〇〇:あれは咲月?

和:だねさっちゃんだ

〇〇:なんか泣いてなかった?

和:大丈夫かな…?

〇〇:心配だな追いかけてくる

和:いってらっしゃい

_________

〇〇を避けはじめて1週間

〇〇もなんか寂しがってたし

咲月:今日は一緒に帰ってあげようかなぁ〜

荷物を取りに教室に戻った時だった

和:うん、好きだよ

聞こえてきたのは和の声

っ…!?告白…!?

〇〇:好きだな…

ついに和が…

告白……

〇〇も好きだな…って…!

正ヒロインの確定演出

それがわたしの負けの合図になる

咲月:うぅ…わたしの恋が…グスッ

ガタッ!

ドアにぶつかってしまった

とっさに出たのは

咲月:ご、ごめん!

和と〇〇の時間を邪魔してしまったという思いと

負けに進んでいく運命

逃げ出すしかなかった

向かった先は屋上

冷たい風に

日が落ち暗くなる空

季節は冬

小さく座り込み

スマホで検索した

「負けヒロイン あるある」

・主人公に惚れてる

・幼なじみ

・メインヒロインと仲が良い

・主人公への片思いが成就しない

咲月:はぁ…全部わたしに当てはまる…グスッ

咲月:負けたくなかったよ…グスッ

咲月:どうしよう…もっと喋れないじゃん…

咲月:はぁ…明日学校休もっかな

どうすればいいんだろう?

〇〇:あ、咲月…見つけた…

咲月:なんで…?来たの…?

〇〇:だって咲月が泣いてたから

咲月:別にわたしになんか構わなくていいんだよ…

咲月:だって負けヒロインだもん…

咲月:どうせ負けるんだし…

咲月:優しくしないでよ…

〇〇:どういうこと?咲月は負けなの?

咲月:だってさっき和に好きって言ってたじゃん!

咲月:和が好きなんでしょ!

咲月:どうせ〇〇だってわたしのこと負けヒロインって思ってるんでしょ!

〇〇:なんの話をしてるの咲月は

咲月:言ってたじゃん…咲月は負けヒロインみたいだねって

咲月:負けヒロインは転校生に好きな人を取られるんでしょ?

咲月:和が正ヒロインだよ…

咲月:負けヒロインのわたしは勝てないの…!

〇〇:咲月…

〇〇:ねぇ…

〇〇:聞いていい?

咲月:なによ

〇〇:それってさ

〇〇:咲月は僕のこと好きってこと…?

咲月:そうだよ…!

咲月:この際言うけど!

咲月:〇〇のことが好きなの…!

咲月:でも〇〇は和が好きなんでしょ…?

〇〇:いや…

〇〇:それは違う

〇〇:僕は和のことは好きじゃないよ

〇〇:和は趣味と話の合う友達

咲月:でもっ!教室で!和に好きって言われてたし!

咲月:〇〇も好きって…

〇〇:違うよ

〇〇:だって話してたのは

〇〇:咲月の話だもん

咲月:え…?わたし…?

〇〇:そう、ここ最近の咲月は僕を避けてるっていうか

〇〇:なんか咲月がいないだけですごい違くて

〇〇:こう寂しいっていうか

〇〇:隣にいてほしいって言うのかな

咲月:え…?どういうこと…?

〇〇:だから和に相談してたんだ

〇〇:咲月のこと好きなんじゃないかって

咲月:……っ!

〇〇:だから告白もされてないし

〇〇:付き合ってもいない

〇〇:どうしようかな

〇〇:僕も言っちゃおうかな

〇〇:僕は咲月が心配だから追ってきた

〇〇:なんで心配だったか分かる?

咲月:それは…泣いてたから?

〇〇:まぁそれもあるけど

〇〇:咲月ももう分かってきてるんじゃない?

〇〇:咲月のことが好きだからだよ

咲月:え…?わたしのことが…?

〇〇:そうだよ

〇〇:咲月が好きなんだ

〇〇:ずっと隣にいてほしい

〇〇:かっこつけて言わせてもらうね

〇〇:咲月さん僕のヒロインになりませんか?

咲月:……っ!

咲月:ほんとに…?

〇〇:本当に本当

〇〇:どう?ヒロインなってくれる?

咲月:はいっ…!喜んでっ…!



わたしは負けヒロインじゃなかった

〇〇がわたしをヒロインに選んでくれた

もしかしたらわたしは誰とも勝負していないのに

勝手に1人で負けていただけかもしれないな





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