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嫉妬と羨望のあいだ。海を悠々と泳ぐ亀のよう。

いろんなことがあった1週間。やりたいこと、やっておかなくてはならないことにもみくちゃになり、気づくと1日が終わる。そんな状態。
心地よい疲れと、ちょっと休憩挟もうか、の真ん中くらい。
先月末くらいから観たい映画のラッシュ。

フィルマークスのレビューも追いつかず、勢いまかせというか鉄を熱いうちに打ちたい派の私は、気持ちと行動が追いつかずモヤモヤしている。

そんな中、ずっと楽しみにしていた「くるりのえいが」を観てきた。
くるり。圧倒的なカリスマバンド。センスの塊。穏やかで尖っててどんどん変化していくことを恐れないのに、根本は変わらない安心感。
私の個人的な感想というか位置付けなんだけれども、
小説家で言うと、村上春樹や江國香織にあたるのが、くるり。
と言うのも、毎回好みの曲ばかりではないし「ん?」と思う曲もあるけれども、結局アーティストへの信頼感が半端ないので新作(新曲)が出ると聴くし、非難されると擁護したくなる。

何が言いたいかというと、大好きなの。
つまりは、大好き。かっこいいのよ。圧倒的に。

この映画は、くるりの14枚目のアルバム「感覚は道標」が出来上がる様子を映し出したドキュメンタリー作品。オリジナルメンバーである森信行を交えて作成した様子に胸が熱くなる。しかも、作成過程を結構ふんだんに見せてくれて、それがとってもエネルギッシュで暖かく、じわじわと鳥肌が波のように押し寄せてくる。

楽しそうだ。そしてとっても頭を体を使い、お腹が空いてきそうだ。エネルギーを燃やして、火を焚べて、放出している。それが、とてつもなく眩しく見える。

羨ましい。なんて楽しそうなんだろう。なんて生き生きしているんだろう。

こんなふうに、アイディアを出して意見交換して生み出して研いでいく。
何度も何度もチャレンジしていじくり回してみる。

嫉妬って、良い意味であんまり使わない言葉だろうけれど、
私はとっても羨ましかった。
こんな才能の塊の人たちに対して、あまりにも烏滸がましいのかもしれないが、
正直に言うと、嫉妬しているのだと思う。

こんなふうに、私も自分の考えを能力を大きく自由に放出して研いでみたい。

ごちゃごちゃ言って、やりたいこと、やっておくべきことをコントロールできず
バタバタともがいている最中の私には非常に刺激的だった。

私にとって、くるりは、今も変わらずかっこいいバンドだ。
かっこいい大人がかっこいい姿を見せてくれるのは、それを感じられるのは、幸せなことだ。
年齢を重ねてくると以前より強くそう思う。
生きていくことに、希望が持てる。

オリジナルメンバーで作成したアルバム。過去の焼き直しという言葉が映画の中で出てきたが、もしそうだったとして、
それでこんなに爽やかで新鮮で生き生きとした曲ができるのならば
それって最高じゃないか。

三人で顔を合わせて楽しく真剣に音楽作成を行い、ご飯を食べ、笑い合う3人を見て、涙が滲んだ。
くるりの「東京」のライブパフォーマンスも今の彼らで見ることができて、
ずっと鳥肌が立ちっぱなしだった。
ライブは当たり前だけれど「生き物」。
その生き物をステージの上で生み出す、コントロールする、彼ら三人のパフォーマンスが素晴らしいの一言に尽きる。

自然でシンプルなドキュメンタリー作品。
だから、くるりが好きな人には響かないかもしれない。
好きな人には最高のご馳走です。
美味しいお味噌汁みたいな。そういう日常の安心する湯気が出ている暖かいやつです。

上映かんが少ないようだし、公開期間短そうなので、気になる人はぜひ。
あと、疲れていて悲しい気持ちの人もぜひ。
すごくね、力が出るし癒されるし刺激を受けます。

「感覚は道標」。
この言葉も今の私にグサリと刺さった。
感覚。ずっとマイナスに捉えてきた私の長所でもある。
感覚って、道標になるのね。
ありがとう、くるり。

大海原を堂々とゆったり泳ぐ亀のよう。
多少のことには動じずに、自分のペースで、悠々と泳いでいく。

作品を通して受けた自分の感覚を、忘れずにいたいなと強く思った。
それくらい良かった。とっても。

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