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19歳の春

「卒業生総代、◯◯◯◯」と名前を呼ばれた時、緊張と恥しさと、誇りが入り混じった気持ちで、来賓にお辞儀をし、かつ壇上前に立ち止まって、一礼した。その時の光景が今も蘇ってくる。
一歩前に出る。学校長は卒業証書を持ち上げ、厚みのある証書を少し扱いにくそうに、が、しっかり持ち上げて、私の方に差し出した。学校長の顔をしっかり見て、それからゆっくり卒業証書を両手で受け取り、ゆっくりお辞儀をした。2歩下がり、さらに来賓、教職員にお辞儀をして前列中央の自席に着席した。

卒業式を終えて、数日経った。東京の大学に入るための準備をしなくてはならなかった。母が手縫いで作ってくれた布団一式を駅から送るのである。その手続きを母と一緒に最寄りの駅に行った。
桜の蕾はまだ固かったが、私が故郷を後にする頃には咲くだろうことは推測できた。

その日は、桜が五分咲きだった。寝台列車をホームで待っていた。友人たちが私を送るためにホームに並んでいた。これ以上書くと、涙が出そうになる。この続きは、別編としてお届けしたい。

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