大人ごっこ

女性のお客さん対応をするとき、私は眉毛や所作をじっくり観察している(笑)
これは私の自分磨きの一環であって、ガンを飛ばしているわけではない。
ちゃんと笑顔で接客しているし、他人のいいところは真似して取り入れる!
女子力アップのためなのです。

学生の頃、ものまねが得意だった。
芸能人とかではなく、身近な先生なんかのものまねをしてふざけていた記憶。

仕事の場を、品のある大人女子になるべく訓練の場としているので(笑)がさつな私も人前での所作はかなり丁寧になってきたとおもう。

ふと気がついた。
お客さんに、買い方を教えたり、クジの説明をするときの言葉遣い。
これがなっていなかった。

申込みカードを機械に通す。
私たちはその内容をモニターでチェックしている。
不備があればお客さんに戻して確認する。
日本語が得意ではない外国人には、少々雑になってしまうのだけど
『これはOK!これはNOね!YES、YES、GOOD!』
みたいに、簡単・シンプルに言った方が伝わりやすいが、日本人の高齢者や初めて買う人に説明するときなどの言葉遣いに丁寧さが欠けていた。

マークシートを塗りつぶすだけなのだが、歳を重ねると小さいものが見えにくくなる。
マスからズレたところを塗っていたり、塗りつぶさずに丸で囲っていたりするお客さんに対して、
『あのね、塗るところはここじゃなくて…』とか『違う違う、こっちこっち、これを買うならここを塗るの!そうそう』
などと言っている自分に気が付いた。

中学高校は女子校で、私を含めて4人、今も仲良くしている友だちがいる。
個々で遊ぶことはあっても4人が集まれるのは年に1〜2回。
女3人で姦しい。
女4人はやかましい。
私たちはうるさすぎるので、周囲への配慮から4人飲みのときは個室にしている。

見た目はもう十分すぎる立派な大人なのに、私たちは集まると女子高生当時のままで喋っているので、大人すぎる見た目とのギャップがあまりにも酷い。
私たちはヤンキーだったわけでもないのだけど、再会したときの第一声が
『あ〜お久しぶり〜!』ではなく、『おーひーさー』だの『ヤッホーい』だの『おっすー!』などと言って再会を喜びあっている。

友達の名誉のために書いておくのですが、4人のうち2人はとてもお堅い仕事に従事している。
『ねぇねぇ、仕事中に、うちらと喋っているときみたいな言葉遣いが出ちゃったりしないの?』
『出るわけないっしょ、出たらアウトだわ』
いい歳をして「うちら」などと言っているのがもはやアウト!
友達が宝くじ売り場に来てくれたことがあった。中を覗きながら
『これって秘密基地みたいじゃん!ヤバっ!』
『ワハハハ〜』
これが私たちの素なのだ。

もちろん私たちも、TPOはわきまえているので、場面場面ではちゃんと、それなりに歳相応な振る舞いをして生活しているはずだけど(笑)
『うちらはいつまで、こんな話し方してるんだろう?さすがに80歳とかになったら、こんな話し方はしないっしょ!するかなぁ?どうなんだろうね〜?80歳まで生きているか知らんけど!アハハハッ』
そんなことを話しながら盛り上がる。

この4人のなかの1人と骨董市に行った。
お祭りの屋台みたいに、たくさんのお店が出店していた。
ぶらぶら散策していると、和柄の布で作ったポーチや巾着が売られている一画があった。
お店を開いていたのはおじいさん。
「手作り」のPOPが出ていた。
『かっわいい〜!こーゆうの大好き!うわっ!めっちゃかわいいじゃん!』
手に取ってあれこれ見ていたところに、同世代の女性2人連れがやって来た。
『わ〜、素敵ね〜!すみません、これ、お父様が手作りしてらっしゃるの〜?なんて素晴らしいのかしら〜』

その場を離れて歩き出した私たち。
歩きながら、どちらからともなく、同世代女性の声色を真似し始める(笑)
『素敵ね〜』だって〜。
『お父様が手作りしてらっしゃるの〜?』だってさ〜。
彼女たちのことを『あの人たち貴族?』とか『叶姉妹みたいだね』とか、そんなことを言いながら、子どもじみた遊びを始める私たち。

いろんなお店を覗いては
『あら〜素敵ね〜』
『これはどちらで作られたものなんですか〜?』
『まぁ〜素晴らしいわぁ』
なんて言いながら骨董市を見てまわった。

散策を終えて飲みに行った先でも
『まぁ、美味しいわね〜』
『ほんとよね〜』
メニューを見ては店員さんに
『これは国産のものを使ってらっしゃるの?』など、飽きもせずにそんな調子でふざけ倒した別れ際。
『今日は楽しかったわ〜、またご連絡差し上げますね〜』
『ええ、お待ちしてます』
『それでは、ごきげんよう』
『ごきげんよう』
と言って別れた。

その後LINEで「うちらだってやればできるよね!」

大人女性への道はまだまだ遠い。
一朝一夕で出来るようなことではないけれど、私はまだ諦めずに、素敵な大人女性になるべく、日々を過ごしている。

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