羞恥心て、なんやろね?

羞恥心についての雑感記。

よしっ!今だね!
お客さんが途切れたのを機に、休憩を取る。
「◯時◯分〜◯時◯分まで休憩」の札を出す。ブラインドを半分下げて、内側から施錠もした。
いざ!重いドアを開けて外へ。鍵をかけていると、
『おーーい!おーーーーい!』
遠くから聞こえてきた。雑踏の中の雑音。
さてと。
『宝くじーー!休憩なのーー?どっか行っちゃうのーー?』
声のする方に目を向ける。
ニット帽をスッポリかぶり、遠目にも着膨れているのがわかる年配女性が、自転車を横に携えて私に向かって叫んでいた。
うぇ〜っ、私に言ってるんだ!わぁぁぁ…。

沢山の人が行き交っている街中。
目算で、女性と私との距離は50mくらい。
『ねーー!だめーー?どっか行くのーー?』
おばちゃん、恥ずかしくないの?すごいなぁ。けど、ある意味、尊敬もしてしまう。
だけど、困ったな。やだよぉ、私は叫べないよ〜。

若い頃から比べると、図々しくなってきていると自覚はしているが(笑)さすがに、さすがに、街中であんな大声は出せない。まだあそこまで、あの域にまでは達観できていない自分。
羞恥心だってある!
というよりも、あんな大声、私に出せるかしら?出せたとしても、出したくない。どうしよう…。

その自転車に乗って、こっちに来てくれたらいいのに!
なんでこっちに来てくれないの?なんでフリーズしたまま叫んでるの?
どうしよう…。
たくさんの人が往来しているなかで、声を張り上げ、叫ぶことは恥ずかしい。できない!羞恥心が邪魔をする。
『ねぇーーーー!閉めちゃうのー?休憩なのーーー?』聞こえてないフリして、行っちゃおうかなぁ…。
いや、それはまずいか…だめだよね。
おおっ!そうだ!両手を上にあげて、◯のポーズをしてみる。
『なーにー?それ、なーにー?』
おばちゃん、見えてるでしょーよ!コントじゃないんだからさぁ。
なんなら、バツにしてみよっかなぁ。
その自転車に乗って、いいかげん、こっちに来ておくれよ。
『おーーーい!!』おーい!じゃないのよ、まったく。

くぅーーっ、もういい!ヤケクソだぁぁぁ!!
『どーーーぞーーー!』
は、恥ずかしいよ、もーっ!
『いいのー?行っていーいー?』

来なよ、早く。

鍵を開けて、中に戻る。休憩の札を外し、営業状態に戻した。

程なくしてやって来た女性。
『ごめん、ごめん!せっかく買いに来たのに、閉まっちゃいそうだったからさぁ、ちょうどよかったよ!焦っちゃったよ』

ちょうどよくはなかったんですけどね。

『そうなんですね、わざわざありがとうございます』終始抑揚のない話し方で応対してしまった。羞恥心は捨てきれず、大人げもない私でした。

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