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楽観主義と悲観主義。TKA術後の転帰と関連


📖 文献情報 と 抄録和訳

人工膝関節全置換術を受ける患者において、楽観主義と悲観主義は術後の膝機能に反比例的に関連している

📕Wunderlich, Felix, et al. "Optimism and pessimism are antithetically associated with post-operative knee function in patients’ undergoing total knee arthroplasty." Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy (2023): 1-10. https://doi.org/10.1007/s00167-023-07434-8
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[背景・目的] 気質的楽観主義や悲観主義などの性格特性は、健康に関連する様々な問題に影響を与える。人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty, TKA)における転帰への影響は、他の性格特性概念についてのみ示されているが、気質的楽観主義/悲観主義については示されていない。本研究の目的は、気質的楽観主義/悲観主義とTKA術前の関節機能および術後転帰との関連を検討することである。

[方法] データは多施設、横断的、前向き研究(PROMISE Trial)で取得した。患者は術後12ヵ月間追跡された。術前にrevised Life Orientation Test(LOT-R)を用いて心的楽観主義/悲観主義を測定し、術前・術後に12項目のKnee-osteoarthritis outcome Scores(KOOS-12)を用いて機能を測定した。既知の交絡因子を考慮した対数線形回帰モデルとt検定を行い、LOT-R得点と術前術後のKOOS-12得点との関連を示した。

✅ 楽観主義/悲観主義の評価指標:revised Life Orientation Test(LOT-R)
・患者の性格は、revised Life Orientation Test(LOT-R)のドイツ語版を用いて術前に調査された。
・LOT-Rは、1985年に発表されたScheierとCarverのモデルに従って、気質的楽観主義と悲観主義を測定するために広く用いられている尺度である(📕Scheier, 1994 >>> doi.)。
・スコアは10項目で構成され、楽観主義を評価する3項目(1、4、10)、悲観主義を評価する3項目(3、7、9)、その他に4つのフィラー項目がある。回答は5段階のリッカート尺度で行われ、回答カテゴリーは強く同意する~強く同意しないの範囲である。
・楽観主義と悲観主義のサブスケールの得点は、対応する項目の得点の合計である。

[結果] 740人の患者が解析された。
■楽観主義とTKA転帰
楽観的LOT-Rは術前術後のKOOS-12の平均得点と有意に正の相関を示した(術前:楽観的p=0.001;術後楽観的:3M p=0.001、6M p=0.001、12M p=0.001)

■悲観主義とTKA転帰
悲観的LOT-Rは有意に負の相関を示した(術前:悲観的p=0.001;術後悲観的:3M p=0.01、6M p=0.004、12M p=0.001)。

[結論] 楽観主義はTKAの術前の関節機能、そしてより重要な術後の機能的転帰と正の相関があり、悲観主義はその逆の相関があった。手術前に患者の一般的な性格特性を評価し、悲観的な患者、つまりTKAの転帰不良のリスクを持つ患者を特定することで、患者の特別なニーズや悲観的な可能性のある期待に対応すること、すなわち認知行動的介入を行うことを検討すべきである。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

ユーモアや笑い、明るい気分が病気の回復に結びつくことは、今では数えきれないほどの研究によって証明されている・・・・・・あまり笑わない人、いつも暗い気分でいる人は、心理学者のアイゼンクが言う「疾病誘発パーソナリティ」の持ち主である。こういう人は、楽観的な人より病気にかかりやすく、病気にかかると、ほかの人が同じ病気になったときより治りにくい。こういう言い方もできる。病気になったとき、その病気をどう受けとめるかによって、病気は治りやすくも治りにくくもなるし、治る早さも違ってくる。
パッチ・アダムス

パッチ・アダムスの言っていたことは、近年になって、科学的に証明されつつある。
文献抄読「あり」の中でも、楽観主義者と寿命の関連があることや、気質と健康アウトカムの関連の理論モデルなどの抄読をしてきた。

そして、これらのことは臨床経験からも、至極納得のいく話なのである。
初回の理学療法において、悲観的な発言が多いことや、疼痛に対して必要以上にセンシティブであることは、「この方の機能予後や改善速度は、あまり良いものにはならないだろう」という推察につながっている。
そして確かに、そうなることが多いのだ。

パッチ・アダムスはジョークを連発するユニークな療法で、人々の心と体を癒した。
その背景には、考察の冒頭で述べたような理念があったのだろうと思われる。
患者さんの悲観傾向を、少しでも楽観傾向に変えることができる技術があるなら、それは徒手療法と同等か、それ以上の働きをすることがあるのかもしれない。
ユーモアを、学ぼう。

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