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アウトカム指標のK2P。病院PTのアウトカム使用を激増させた方法

📖 文献情報 と 抄録和訳

知識移転の介入により入院リハビリテーションにおける理学療法士によるアウトカム指標の使用が増加した

📕Romney, Wendy, et al. "Knowledge translation intervention increased the use of outcome measures by physical therapists in inpatient rehabilitation." Physiotherapy Theory and Practice 38.12 (2022): 2019-2028. https://doi.org/10.1080/09593985.2021.1898065
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✅ 前提知識:K2Pとは?
・学習する医療システム(Learning Health System: LHS)の最大の1項目
・LHSがカバーする領域はデータ収集(P2D)からエビデンスの生成(D2E)、エビデンスの知識化(I&E-E2K)からその実践(K2P)、と多岐に渡る。
・とくに重要視され、多く研究が行われている分野がK2P(Knowledge to Practice ≒ Knowledge to Action)である。
・言い換えれば、研究室と臨床現場のギャップである。

[背景・目的] アウトカム指標(Outcome measures, OM)は、患者診療を最適化するために医療専門職によって重視されているが、OMの定期的な使用は不足している。本研究の目的は、入院患者のリハビリテーション環境における理学療法士による OM の使用を増加させるための知識変換(knowledge translation, KT)介入 の結果を説明することである。

[方法] 準実験的な事前-事後研究デザインを使用した。5 つの OM の使用を増加させるために、教育、組織的支援、文書化、および環境の変化を含む多成分 KT 介入が実施された。6 ヶ月目に監査とフィードバック(Audit and feedback, A&F)が KT 介入に追加された。OM の文書化は、手動のカルテ監査(n = 864)および電子的な監査(n = 2599)により行われた。回帰分析により、時間および診断名における OMs の使用と関連する因子を同定した。

[結果] 6ヶ月目にKT介入にA&Fを追加したところ、すべての時間間隔(6-12ヶ月、12-18ヶ月、18-24ヶ月)においてOMs使用の確率が有意に増加した(オッズ比(OR) 5.9, 95% 信頼区間(CI) 4.1-8.5; OR 8.5, 95% CI 6.0-12.1; OR 10.8, 95% CI 7.6-15) 。また、神経学的診断を受けた患者に対するOMの文書化のオッズは有意に増加した(OR 0.3、95%CI 0.5-0.8)。

[結論] この KT 介入により、24 ヶ月間にわたり OM の利用が増加し、維持された。この介入は、理学療法士のエビデンスに基づく診療を改善するために再現することができる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

実行のなかにのみ学問がある  行動しなければ学問ではない
王陽明「伝習録」

アウトカム指標の信頼性/妥当性、予後予測の能力、フィードバックの威力…。
数多の研究が、臨床現場、ラボで行われ、その数は積み上げればテッペンが見えないくらいの高さになるだろう。
「で、どのくらい使ってんの?」
という、繊細なガラス細工にグーパンチするような質問を投げかけるのが、K2Pだ。

当たり前のことだが、知っているだけでは、現実は変わらない。
その有用と思われる知識を実行して、集団構成員の意識/行動が変わり、患者に対してのアクションが変わることで、始めて現実が変わる。
その知識と行動をまたぐ橋を、目に見える形で建築しなければならない。
それをやったのが、今回抄読した研究だ。
プロセスを経時的に示しているので、現場で取り組みやすい。
1年間単位のプロジェクトとして、これをトレースできれば、5-8倍程度のアウトカム指標の使用が期待できるかもしれない。
早速、事業計画を立ててみよう!

やってみなはれ
鳥井信治郎[サントリー創業者]

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