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タッチ介入の威力


📖 文献情報 と 抄録和訳

タッチ介入の身体的・精神的健康効果に関するシステマティックレビューと多変量メタアナリシス

📕Packheiser, Julian, et al. "A systematic review and multivariate meta-analysis of the physical and mental health benefits of touch interventions." Nature Human Behaviour (2024): 1-20. https://doi.org/10.1038/s41562-024-01841-8
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar, ハイライト【🇯🇵】
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🔑 Key points
🔹人間や動物から身体に触れられると、成人と小児で、痛み、うつ感情、不安感が軽減し得ることが、系統的レビューおよびメタ解析の結果から明らかになった。
🔹身体接触が、健常者でも病気を抱える人でも、またあらゆる年齢層において、多数の身体的・精神的な健康転帰に有益であることが示唆された。

[背景・目的] 身体接触は人間にとって極めて重要で、新生児に最初に発達する感覚であり、人間が世界と相互作用する際の最も直接的な方法である。これまでの研究では、身体接触が身体的な健康にも精神的な健康にも有益であることが明らかになっていたが、特定の健康転帰に集中していたり、接触のタイプや接触する人などの他の変数の影響が考慮されていなかったりした。

[方法] タッチ介入の有効性を調節する重要な因子を特定するために、事前登録(PROSPERO: CRD42022304281)されたシステマティック・レビューとマルチレベル・メタアナリシスを行い、メタアナリシスでは137の研究、システマティック・レビューでは75の追加研究(n = 12,966人、2022年10月1日までGoogle Scholar、PubMed、Web of Scienceで検索)を網羅した。組み入れられた研究は常に、多様な健康アウトカムを従属変数とした、タッチ介入対タッチなし対照介入を特徴としていた。バイアスのリスクは、小規模研究、無作為化、シーケンス、パフォーマンス、萎縮バイアスによって評価された。

[結果]
■ タッチ介入の効果:全体, 身体的, 精神的健康
・タッチの効果は全体として中程度であった(t(102) = 9.74, P < 0.001, Hedges' g = 0.52, 95%信頼区間(CI) 0.42 to 0.63)。
・身体的, 精神的健康とも中等度の効果あり(それぞれHedges' g = 0.50, Hedges' g = 0.55)

■ タッチ介入:アウトカム別の効果
不安抑うつに対する大きな効果
疲労痛みに対する大きな効果

■ 何でタッチするか?
精神的な健康へのより大きな利益は、物への接触に対してよりも、人間が他者に触れた際に見られた。

[結論] タッチ介入の有効性に影響を及ぼす因子を活用することは、今後の介入の有益性を最大化し、この分野の研究を集中させるのに役立つであろう。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

愛とは、単なる『接触の心地よさ』である。
この大胆すぎる結論を下したのは、有名なハーローによる猿の実験である。

✅ ハーローによる猿の実験
アカゲザルの赤ちゃんのいるオリに、お母さんザルを模した人形を入れる。
この「お母さんザル人形」は2タイプ用意する。
①針金がむき出しだが、おっぱい(哺乳瓶)があるタイプ
②おっぱいが出ない(哺乳瓶がついてない)が、肌触りのよいフェルトでくるんだタイプ
そうすると、赤ちゃんザルは明らかに②の「フェルトお母さん」を好み、①の「針金お母さん」にはお腹がすいたときだけに近寄る、という行動パタンを示すことが分かった。
つまり、赤ちゃんザルにとって、お母さんに求めるものは
「肌触りの良さ・心地よさ」>「栄養」
という優先度があるらしいことが示された実験。

📕 Harlow. "The nature of love." American psychologist13.12 (1958): 673. https://doi.org/10.1037/h0047884

今回抄読したメタ解析は、その『接触』について、とことんまで解析した。
身体的健康、精神的健康に対する効果。
どのようなアウトカムに対して効果があるのか。
そして、人による接触が良いのか、物による接触が良いのか、さらにマッサージが良いのか、それ以外(ハグなど)が良いのか。

理学療法士、作業療法士は、いわば『身体接触』を生業とする集団である。
そんな我々にとって、今回のメタ解析は、さながら聖書のように写った。
重要な結論としては、タッチ介入は全般、身体的、精神的健康に有効であること。
そして、精神的健康に対しては、人による接触が有効であること。
この文献を読んで、『身体接触』が有効であることの裏付けが得られた。
自信をもって、タッチ介入に勤しみたい。

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