平成30年7月豪雨。豪雨は高齢者を介護施設に入れた
📖 文献情報 と 抄録和訳
2018年日本水害が高齢者の介護施設入所にどのような影響を与えたか
[背景・目的] 目的地球温暖化により災害が頻発する中、世界各国は脆弱な高齢者を保護する方法を模索している。このような状況は、高齢者の介護施設入所率(nursing home admission, NHA)を高める可能性があるが、この仮説を直接検証した研究は知られていない。デザイン本研究は、レトロスペクティブ・コホート研究である。
[方法] 国内史上最大の記録的な洪水災害である2018年日本水害で大きな被害を受けた日本の3県の介護保険(long-term care insurance, LTCI)利用者のデータを分析しました。具体的には、LTCI総合データベースから、被災者・非被災者ともにNHAデータを抽出した。Cox比例ハザードモデルを採用し、潜在的な交絡因子を調整した上で、2018年日本水害後6ヶ月間のNHAに関する多変量調整ハザード比(hazard ratios, HR)を算出した。
[結果の概要調査期間中にLTCIサービスを利用した187,861人のうち、2156人(1.1%)が災害の影響を受けたと確認された。NHAは、被災者(非被災者)において有意に高く(調整後HR 3.23: 95% CI 2.88-3.64) 、高齢(90-94歳 vs 65-69歳: 2.29, CI 1.93-2.70) 、認知障害(重度の障害 vs 正常: 1.40, CI 1.25-1.57) 、身体機能(寝たきり vs 独立: 2.27, CI 1.83-2.70) でも高くなることが示された。
サブグループ分析によると、自分で食事ができない被災者の調整済みHRは6.00(CI 3.68-9.79)であり、2つの変数の間に有意な相互作用があった(P = .01)。
[結論] 自然災害は、高齢者、特に自分で食事ができない人のNHAリスクを高める。医療従事者と政策立案者は、この新たなリスク要因について理解し、備えるべきである。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
日本は災害大国である。
その日本に住む僕たちは、災害が医療や介護に及ぼす影響について、もっと知らなければならない。
今回抄読した研究は、その影響の一端を明らかにしてくれた。
災害時には、特に自分で食事をとることが難しい高齢者の施設入居率を高めるという。
確かに、災害時には介護者は、自身のADLを維持することすらおぼつかず、介助量が大きい方が施設入居せざるを得なくなることは、納得のいく話だ。
学べる教訓としては、医療者、介護人員を災害箇所に集中させるようなシステムの必要性、か。
例えば、休職中の方で動員できる方が参加できるシステムを構築しておくとか。
歴史は、刻々とつくられ続けている。
ぜひとも、いちいちの歴史から学びたいものだ。
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