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視覚・聴覚障害と健康寿命

📖 文献情報 と 抄録和訳

視覚・聴覚障害とADL/IADL制限のない余命:英国高齢者縦断研究と健康・退職研究からの証拠

📕Zaninotto et al. "Vision and Hearing Difficulties and Life Expectancy Without ADL/IADL Limitations: Evidence From the English Longitudinal Study of Ageing and the Health and Retirement Study." The Journals of Gerontology: Series A 79.2 (2024): glad136. https://doi.org/10.1093/gerona/glad136
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[背景・目的] 聴覚と視覚の障害は、高齢者が経験する最も一般的な障害のひとつである。視覚障害または聴覚障害のいずれかがあると、合併症、障害、生活の質の低下のリスクが高まる。しかし、これまでのところ、日常生活動作(activities of daily living, ADL)や手段的ADL(instrumental ADL, IADL)に制限のない余命(LEWL)に対する視覚や聴覚の障害との関連を検討した研究はほとんどない。

[方法] データは2002年から2013年までの英国高齢者縦断研究(English Longitudinal Study of Ageing)および米国の健康・退職研究(Health and Retirement Study)から得た。転帰はADL/IADLで2回以上の制限を報告したことと定義した。平均余命は、聴覚障害と視覚障害を別々に、また視覚障害と聴覚障害を合わせて性・年齢別に離散時間多状態生命表モデルにより推定した。

[結果] 英国および米国では、男性の13%がADL/IADL制限を有していたのに対し、女性では英国で16%、米国で19%であった。すべての年齢において、視覚または聴覚の障害は、障害がない場合に比べてLEWLの短縮と関連していた。二重感覚障害(視覚と聴覚)は、両国ともLEWLを最大12年短縮した。イギリスでは50歳および60歳において、聴力障害は視力障害よりもADL/IADLに制限のない生活年数の短縮と関連していた。

一方、米国では、視力の障害は聴力の障害よりもADL/IADLの制限なしに生活した年数の短縮につながった。

[結論] 視力障害および聴力障害の有病率および発生率を低下させる戦略を実施することにより、ADL/IADLの制限なしに過ごせる年数が増加する可能性がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

視覚と聴覚、そのどちらもADL、IADLにとって重要だ。
視覚障害が低下していれば、もちろん移動時の環境把握が大変になるだろうし、細かな作業の際にも障壁となるだろう。
聴覚障害が低下していれば、コミュニケーションの最大の弊害になるだろうし、公共交通機関を利用する際のアナウンスが聞こえにくいことは大変そうだ。
今回の抄読研究は、それらの感覚障害が健康寿命(ADL、IADL制限を有さない寿命)にどれほど影響を与えるかを調査した。

その結果、健康寿命が短縮したのは、予想通りの部分だ。
興味深いと感じたのは、国間によって差が生じていた事。
イギリスにおいては聴覚障害の方が健康寿命短縮の弊害が大きく、アメリカでは視覚障害の方が大きかった。

この部分には、どのような理由が作用しているのだろう。
考察においては、先行研究と紐づけているが、明確な理由は提示されていないように思う。
日常生活に求められる感覚需要が、国によって異なるのだろうか。
ここは、今後の研究が待たれるところであり、日本ではどうなのかも気になる。
何にせよ、二重感覚障害を有する方には、退院支援はより濃厚に行う必要がありそうだ。

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