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ファーストラヴ/寺本理生


人と話すのが好きなはずなのに、無性に話すのが嫌になる時がある。
特に相手が気持ちよさそうに話を進めている時。それが理解の出来ない内容だとしたら尚更苦しくなる。

なぜかと言うと、「へぇ〜そうなんですね!それでどうなったんですか?」と嘘のリアクションをしないとその場が上手く進まないから。

話してくれてる人に嫌われたくないからなのだろうか。
話をうまく進める為の方法をそれしか知らないのかもしれない。


【「今は今の中だけじゃなく、過去の中にあるものだから」】
解説で朝井リョウが取り上げていたこの本の一文。
そんな文があったっけ?と思ってしまった私はきっと集中して読めていないかった。

この本は冒頭に話した、人と話すのが疲れてしまった日の帰り道に買った。
読み終わってから「救われたな」と感想を抱く事はたくさんあっても、
本に助けを求めて買ったのは久しぶりだ。

解説を読んで、自分の心が疲れていた事に改めて気づくことが出来た。



営業職をやっていた知人に聞いた事がある。

“知らない”は武器だと。

「そんな事知らなかったです。詳しく教えてください」

すごいとは言ってないのに、褒められた気持ちになる。自分も気を遣って言ってもらった事がある。嬉しくもなった。

嘘でも、思ってなくても、人は褒められたり、肯定されてると感じると嬉しく思ってしまうものなんだろうか。



本の中の聖山家は自分を守るために心を隠しているようだった。
隠さないと生きていけない環境なんだろう。

私も知らず知らずのうちに人を傷つけてしまっていたのではないかと心配になった。きっと、いや絶対に私は気づけていない。
いちいち、その言葉、傷つきました。って教えてくれる人の方が少ない。

隠した方が、面倒くさくないし、逆に相手を傷つけなくて済む。

自分が知らない事を、あたかも知っているように、語るのは気づかないうちに人を傷つけてしまうのかもしれない、とこの本に教えてもらった。

自分を守る事も、もちろん大事だけど
“知らない”が人を傷つける本当の武器にならないようにしようと思う。

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