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あの日、あの時、あのにおい

あ、今日のにおい…
小学生の時なおみちゃんとカタツムリを見つけながら帰ってきた時と同じにおいだ。

と、急にフラッシュバックして「におい」で記憶が蘇ることが度々ある。
「香り」と呼ぶには綺麗すぎるから、あえて「におい」と呼ぶ。

その記憶は必ずと言っていいほど悪い記憶ではなくて、本当に何気ない日常のひとこまで。涙が出そうなくらい懐かしくて微笑ましくて温かいものだ。

小学1年生になったばかりの時に、両親と3人でつつじを見に行った日のにおい。とてもいい天気で、帰りにたぬきのキーホルダーを買ってもらった思い出。

市営団地に住んでいたころの日曜日。ちょうど笑点がはじまるころの時間。窓を開けて向かいの団地に住んでいるお友達と大声で「やっほー」と呼び合っていたあの日のにおい。キッチンでは母が夕飯の準備をしていて、父はいつものように焼酎の水割りを飲んでいた。

運動会の日のにおい。お弁当にみかんが入ってたな。
弟が生まれた日のにおい。小さくてふにゃふにゃで本当にかわいくて嬉しかった。
暑い夏の日、エアコンのある部屋に家族で布団をしいて寝た日のにおい。チューペットをみんなで食べた。

思い返すとどんどん色々な思い出が溢れ出てくる。決まってわたしが幼い頃の思い出で、小学生くらいまでの記憶だ。

もっともっと濃い思い出はたくさんあるはずだ。中学の時の部活で桃の天然水をひたすら飲んだこと。ピアスホールをトイレで開けたこと。高校での恋愛あれこれ。はじめての失恋ではこの世の終わりくらい落ち込んだ。それでも「におい」の記憶でフラッシュバックすることはない。そういえばあの時、と自分で引き出しを開けなければなかなか思い出さない。

このにおいで記憶が蘇る現象。
どうやらわたしだけではない模様。
そして、しっかり名前までついている。
この現象は
プルースト効果と呼ぶらしい。

ーーープルースト効果とは、特定の匂いを嗅ぐことによって過去の記憶や感情が蘇る現象のこと。人とすれ違った際に感じた香水の香りで昔の恋人を思い出す、懐かしい匂いを感じて幼少期の思い出が蘇るなど、誰しもが一度は経験したことがあるでしょう。プルースト効果が起こる理由は、人間の嗅覚と脳の仕組みが関係していると考えられています。ーーー

プルースト効果。
生きていると、時に苦しくなったり悲しくなったり。起きた瞬間から疲れてる、なんてこの年になるとザラだ。そんなときほど、このプルースト効果に助けられる気がする。

外に出て、大きく深呼吸をしてみる。
「あ、あの時のにおい」
その一瞬だけでも過去の幸せな時間に戻れる。

あの日、あの時になにげない幸せな時間をくれてありがとう。と過去に感謝している。

「普通の日」こそが「最高の日」

今日の記憶もまたそのうち
わたしがおばあちゃんになった頃
あ、今日のにおいは…と思い出すのだろうか。

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