久々に歯医者に行った話

歯医者に行ったよ、俺。

何年ぶりだろう。

昔、歯がとてもいたくて、我慢できなくて、会社のすぐそばの歯医者に行ったら、その場で「神経抜こう!」ってなって、えーっと思っているうちに、「ハイ麻酔!」「ハイ行きますよ!」とブチブチ音がした。ただ、思ったほど痛くはなかった。

割とあっさり終わって、痛くなくなったので、そのおじいさんの先生に挨拶をして帰った。歯の神経抜いても、別に味はかわらないし、痛くないし、やってよかったなあ、とほんわかした気持ちになった。

しかし、数年後、同じところが痛くなり、同じ歯医者に行ったら、若い人に代わっていた。不安だなあ、と思いつつも、神経を抜いた経緯を説明した。「あ、麻酔うって、一時間くらいで…」。そしたら、若い人は「えっ、それ、誰が処置しました?」と訊いて来るので、「あ、おじいさんで、手際はよかったです…」といったら、「院長だ…」とつぶやいていた。要するに、名医であったようである。確かに、会社の偉い人のお父さんなるじいさんと、待合室で一緒で、付き添いでその偉い人がいたので、大変気の重い時間を過ごしたりしたから、そんな偉い人が受けるくらいだから立派な院長にやってもらったんだろうと思って、鼻が高かった。

その若い先生も、腕は良かった。ただ、むやみに麻酔をしないので、「神経が残ってるんですね、一度開いて、残っているやつをとって、埋めなおしましょう」と、ある程度まで削ったあと、キコキコとドリルで、神経の穴を掘り進めていった。

「これって、絶対、ドリルが神経に到達したところで痛い!って思うアレじゃん!」とドキドキしていたけれども、最終的には、あまり痛くなく、神経の残存物を取り除いてもらえた。ありがとう。

その後何度か治療をしていただいた。乳歯が残ってますね、と抜いてもらったり、色々あったけれども、「最終的に親知らず抜きましょうよ」とうるさく言ってくるのに閉口して、足が遠のいた。

そして、8年。

久しぶりに行ったら、「どうもごぶさたしてます」と挨拶した。「あれから何年かわかりますか?」「8年くらいですかね」「ご名答」。うるせーなと思いつつも、腕はいいかつての若い先生も、コロナ禍を経て、すっかり髪は白くなっていた。

「今日はどうしたんですか?」
「いやー、Youtubeで歯垢除去動画とかみてると、自分もちょっとやばいかなってなって、その辺掃除してもらおうと…」
「あ、いや、それでもまあ、アレですよ、ここ穴あいてますよ、でも言うほどではないですよ」

とかなんとか言いながら掃除は結構時間がかかり、しかも、結構がりがりやってくれた。ちょっと痛いけど、歯垢除去動画のような事態が、痛みと共に繰り広げられているのかと思うと、うれしくなって、ガリッガリッといわすその音に快感すら感じてきた。

しかし、思えば、会議の時間に遅れてしまう!ということで、ひとまず今回はこれで終わることにした。研磨まで行ってないので、若干ざらついている。けれども、色々なものが取れた感覚は残っていて、やってよかったと思うのである。

鏡をみて、歯がずいぶん縦長になってきたなあ、と思うのはもうやめたい。もちろん時間は巻き戻すことはできないと思うけど、趣味歯磨きくらいのことは言ってみたい。

ただ、例の神経抜いた側とは逆の奥歯が、除去してもらったあと、若干痛い。「ここに大きな歯垢があります」といわれた歯の周囲。かなりガリガリやっていたものなあ。

歯、がんばって、長生きさせるよう、がんばろう。

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