徒然物語8 紙文化

あっしはこの道一筋20年。この職場では古参者よ。

運ばれてきた書類をせっせと細切れにするのが、あっしの仕事さね。
どうだい?単純だろ?

だけど侮っちゃいけねぇ。これが結構難しい。

普通のコピー用紙なら訳はない。けどな、厚紙とか、本の背表紙なんかは厄介だ。
なんせ、こいつらはえらく固てえもんだから、気合を込めなきゃなんねぇ。

あっしの仕事は夕方から忙しくなりやがる。

「シュレッダーやってきまーす。」

きやがった。さあ、あっしの出番。
見てな。どんな紙でも、桜吹雪みてぇに、散り散りにしてみせらあ。

おいおい、おねーちゃん。入れすぎは詰まるって、何回言わせんだよ。けど大丈夫!逆流で吐き出せるってもんよ!

ちょっとあんちゃん、ネクタイは危ねーから、ピンで留めとくとかして、十分気を付けてくれよな。

今日もあっしのもとには、いろんな奴が入れ替わり立ち代わり集まってくる。印刷機のボウズがせっかく刷った紙の大半は、その日のうちにここに運ばれてきやがる。

あっしから見りゃその紙ホントにいるのかって聞いてみたいが、仕事がなくなっちまうんで、言わぬが仏ってもんか。

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