ステラおばさんじゃねーよっ‼️92.白色アマリリス 〜ブーケ
👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️92.白色アマリリス〜 対 プレイボーイ は、こちら。
🍪 超・救急車
皇居のお濠が見えるテーブル席で、ふたりはフレンチのコース料理に舌鼓を打った。
そこでは、渡り鳥のキンクロハジロの群れが優雅に水面(みなも)を滑っている。
その光景を横目に見つつ、コース最後のデザートを知波は心待ちにしていた。
「知波さんて花、お好きですか?」
「花?そうね花は…」
と考えるふりをし、知波は意地悪な逆質問をしてみた。
「わたし以外にもこのやり方で口説いてきたの?花を嫌いな女性ってそんなにいないと思うわ。ただ男女問わず、育てるのが下手な人、上手い人はいると思うけどね」
知波は余裕ある《大人の女性》で、たしなめてみる。
頭を掻きながら若森は、
「知波さんにはかなわないや。じゃあ、知波さんは花を育てるの、上手?下手?どっち?!」
と訊ねた。
少年のように瞳をキラキラさせて知波をまっすぐに見つめる若森が眩しい。
「わたしは…」
振られた問いに答えようとした時、銀製のワゴンカートに、アップルパイ アイスクリーム添えの皿とバナナクレープ チョコレートがけの皿が運ばれてきた。
「お待たせいたしました。セレクトデザートとホットコーヒーです」
給仕を終えたウェイターが若森に目配せし、テーブル下から何か手渡した。
「さっきの答え、当てますね」
そんな大げさに言われても、知波はすでに目の前に置かれた大好物のアップルパイに目と心を奪われていた。
若森は知波の様子にはお構いなしに、
「答えは、花好きで、育てるのも上手です!はい、お受け取りください」
と知波へ白のブーケを手渡した。
「わあ、可愛い!ありがとう、大正解!」
と知波は言いながら、
「この花の名は?」
と訊ねた。
「《アマリリス》です。今は季節ではないので、artificial flowersにしました。白にしたのは、俺の知波さんのイメージで。今日の服と同じ色で何かホッとしました。あ、長くなるのでコレ、いだきながら話しましょう」
そう言うと若森は率先し、クレープにナイフを入れ口に運んだ。
やっと食べられる!
知波は若森がデザートを食べ始めるのと同時にナイフとフォークを手に取った。
スキンシップからはじまりブーケのプレゼント…。
一連のスマートな段取りに、知波はますます若森に対して疑心暗鬼になっていく。
けれど皿にどっしりと構えるアップルパイがあまりにも上品で甘美な味わいだったので、すこし邪気は薄れた。
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