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ステラおばさんじゃねーよっ‼️83.ドリームキャッチャー 〜悠一朗の夢

👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️83.ドリームキャッチャー 〜サインと誕プレ は、こちら。



🍪 超・救急車


母からの美味しい手料理と妹からの誕生日プレゼントで心が満たされたカイワレは、27歳初夜を枕元のドリームキャッチャーとともに迎えた。

寝床に就き、照明を消すのと同じ速さで目頭が重くなり、瞼は閉じた。

夢の入口の扉はすんなりと開き、異空管を滑り落ち夢の世界へ向かっているいつもの感覚が全身に伝わってくるのがわかった。

⭐︎

足下が靄につつまれていた。

どう考えてもそこは地上ではなく、天空のどこかだと誰もが思った。

靄を蹴り上げ裸足で前に歩いていると、突如現れた1匹の白猫が尻尾を真上にピンと張り、自分の前を堂々と歩いているではないか。

猫が歩くたびに、鈴の音が小気味良く耳に届く。

渋々その後ろについて歩くと、黄色の熊の着ぐるみを着た誰かが、両手を広げて待っている。

胡散臭さ満載のテーマパークを彷彿とさせる光景に、なぜか腹が立った。

なので、熊の両手に捕まらないギリギリの距離で立ち止まってみた。

黄色の熊はゆっくりと着ぐるみの頭部を外した。

顔に見覚えはない。

けれど、懐かしい匂いだけがひしひしと感じられる。

爽やかな笑顔で、誰からも愛されるであろう顔立ちだな、とも。

「父さん!」

突如叫び、涙がとめどなく流れだした。

あの遺骨を、あの丘で見つけた、あの時のように。

ああ父さんだ、父さんなんだ…。

その男性は、ゆっくりとうなずいた。

そして満面の笑みをたたえたまま、ずっとこちらを見ている。

するとキラキラした星のような発光体が、悠一朗を一気に包み隠してしまった。

父さん、逢いたかったよ!また、逢いに来てよ!!

星のまたたきの残像がすべて消えかけた頃、頭上で誰かの声がふたたび響いた気がした。

涙がずっと止まらなかった。

父に逢えた喜びは、誰に一番に話そう?

やっぱり母さんだな、と思いながら、次の夢へと向かう異空管を潜り抜けていた。

ドリームキャッチャー効果で悪夢は除けられ、父・悠一朗に逢えたのかもしれない。

そう考えると、若森にしっかり感謝しなければと、密かに想いが湧き上がるのを感じた。



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