見出し画像

ステラおばさんじゃねーよっ‼️70.トリック

👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️69.カゾクノカタチ〜はじめる家族 は、こちら。



🍪 超・救急車


カイワレは、小鳥遊家で起きた数日間の顛末を、ポーちゃんとひかりに報告した。

ふたりは黙って、カイワレの話に耳を傾けた。

家族の事を想うと、自然と話し方に熱がこもるカイワレ。

家族を得、《知らない自分》を知るのも、新鮮だった。

気づくとふたりは、カイワレに拍手を送っていた。

「たいちゃん、おめでとう!僕らも心おきなく結婚できるよ!!」

ポーちゃんは満面の笑みでカイワレをねぎらい、たたえた。

「たいしろうさん、おめでとうございます。一時はどうなるか心配でしたが、やっと安心できますね!」

ひかりは3人で奮闘したこれまでの出来事を振り返り、心底安堵した。

「ふたりとも本当、ありがとう!不甲斐ない姿ばっかり見せちゃったけど…。ひかりさんには多大な尽力を、ポーちゃんには多大な心配をかけたしね。でもふたりがいなければきっと、【母さがし】をしなかっただろうし、探しててもこんなに早く見つかるなんてなかったと思ってます。本当に、本当にありがとうございました!」

カイワレは、ありったけの感謝の念をふたりに伝えた。

虚空を見上げるポーちゃんは、ぼそりと呟いた。

「あれ、冗談で書いたのにな…」

カイワレとひかりは顔を見合せた。

「冗談て、何を?」

カイワレは不思議そうにポーちゃんに訊いた。

「たいちゃんのお母さんの日記帳の最終ページ!【殺】って文字と破かれた住所…あれ、僕が書き足したんだよね」

「え?!」

ポーちゃんは悪びれもなく、真相をさらりと告白した。

ふたりは目を丸くし、カイワレは訊ねた。

「なんでそんな事したの?」

ポーちゃんは依然、あっけらかんと答えた。

「だって謎が謎を呼ぶ方が、ミステリーとして面白いでしょ?」

ホワイトボードの相関図へ、楽しげにペン入れする刑事気取りのポーちゃんをふたりは思い出していた。

「でもね…」

ポーちゃんは神妙な面持で続ける。

「実際は、僕の想像を大っきく超えるミステリーだった!僕の書き足したトリックなんて、ほとんど意味なかったよね」

遠くを見つめるポーちゃんは口を尖らせた。

まさかの告白に怒る気も失せ、ふたりは笑うしかなかった。

⭐︎

トリック、って…。

ポーちゃんはずっとこんな性格だし、悪気がないからふたりは何も言わなかった。

【母さがし】をする中で、ポーちゃんの謎理論でたくさん癒され、救われた部分もあった。

だから、言えなかった。

ポーちゃんの兄と姉のように、ふたりは彼を見守り、笑い飛ばすしかできなかった。

⭐︎

「これから、どうするのですか?」

ひかりはカイワレにやさしく訊いた。

「八雄市の母の家を売り、伯母さんの残してくれたお金を足して、中古マンションを買おうって話をしてるんだ。そして3人で住もう!って事になったんだ〜」

カイワレの同居話に、ポーちゃんはすかさずガッツポーズした。

「まあ、それは良かったです!それならうちの不動産屋を紹介しましょうか?」

いつものようにひかりは手を差しのべた。

カイワレは毅然と、

「選択肢のひとつとして、検討させてください」

と答えると、ひかりは微笑み小さくうなずいた。

⭐︎

「じゃあ次回は、お花見か伯母さんのお墓参りで」

カイワレがそう提案するとポーちゃんが、

「だったら、小鳥遊母娘(おやこ)にも声かけてよ、たいちゃん!」

と言った。

「訊いてみるね」

とカイワレは笑顔で応えた。

「あ!聖さんのお墓って、桜の樹の下に建てられているから一石二鳥ですね」

ひかりは桜咲く丘を思い浮かべ、笑みをこぼした。

「それじゃあ、桜が満開になる頃に…会いましょう!」

カイワレは、晴れやかに宣言をした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?