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「内視鏡」と素うどん

やっぱりまた今年も引っかかった。人間ドッグの「要検査」。昨年の夏も見事に引っ掛かり、下から内視鏡を入れて小さめの大腸ポリープを5個とった。大事に至る前に悪いものをとることができたことを今の医療技術に感謝したい。検査をした人はわかると思うが、検査日前日は夜8時頃までに食事を終え、寝る前に専用の下剤を飲む。翌日、朝7時から腸内を洗浄する液体を午後の検査まで2リットルほど飲み腸内を綺麗にしなくてはいけない。これが苦痛なのだ。甘さと苦さと酸っぱさとポカリスエットを足して2で割ったような味である。話はもどって前日の食事のことになるが、繊維質や固形物を避け、出来るだけ消化の良いものを食べなくてはいけない。今回は「素うどん」にした。仕事帰りスーパーに立ち寄り、その店で売っている一番高級な「讃岐うどん」と「あごだしの素」を買って帰って来た。どうせ「素うどん」なら、最高の、いや、「至高のうどん」を作ろうと思ったのだ。水から昆布と鰹節でとっただし汁にプラスしてあごだしを加える。旨味の深さがぐんと増す。そして普段よりも少なめのお醤油で味を調える。そこに別鍋で茹でておいた、シコシコツルツルのうどんをゆっくりと入れ、そのだしを極限まで吸わせる。器に移すと。優しい湯気がだしの薫りと同時に浮かんでくる。「至高のうどん」の出来上がりだ。私は最後の晩餐のような気持ちでそのうどんを啜った。もちろん味は言うまでもない。最高の味だ。人の味覚はその時の気分と環境に左右される。検査結果はどうあれ、もしかすると内視鏡検査前日の「うどん」がこの世の中で一番美味しいかもしれない。

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