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空の巣症候群 子育て@オーストラリア

私は子育てをしていた時から、自分が空の巣症候群になるわけがないと思っていました。何故なら、いつもやりたいことがたくさんあって、子育てや家事で自分のやりたいことに十分時間を割けないことに常にストレスを感じていたからです。もっと走りたい、エクササイズクラスに参加したい、もっと本を読みたい、勉強したい、友達に会いたい、家族のためだけじゃなくてもっと人のために何かしたい、もっと社会のために役立ちたい、もっともっと…とずっと思っていました。日本だと子どもが中学に上がるとある程度手が離れるイメージですが、こっちだと送迎が常について回りますし、私の子どもたちはスポーツをしていたので遠くへの送迎が日常茶飯事、それに加えて栄養管理もしなくてはならず、子どもの要望で料理にも手が抜けなかったのです。そのため、この数年は多忙を極め、下の子が高校を卒業して車の免許を取れば、自分のやりたいことがもっとできるはず…あと2年頑張れば、あと1年頑張れば、あと半年頑張れば…とずっと思っていました。ところが、大学が決まって息子が家を出てしまうと、不思議となーーーーんにもやる気が起きないのです。あんなにやりたいことがあったはずなのに。なぜ?!日頃はTo Doリストを作ってどんどん消していくのが好きなのに、To Doリストを作っても数日放置の日々。自分でもびっくりです。こんなことは初めてでした。
上の娘が日本の大学へ留学することを決めて家を出た時は、同時期にコロナ禍がおさまり、息子のことで忙しさが増したので、全然寂しさを感じませんでした。ところが、2人とも家を出てしまうと、心にぽっかり穴があいてしまったのです。これが俗にいう「空の巣症候群」というものなの!????
自分の状態に戸惑うばかり。息子のことにかかりきりで、夫婦関係も冷え切っていたこともあり、子どもが家にいなくなって、生きる意味を失ってしまった気がしました。子育てにおいてはやり切った感がありましたが、これから私どうしよう…という思いばかり毎日毎日押し寄せてきました。私の中では子育てのためにオーストラリアの永住を決めたので、オーストラリアに住んでいる意味さえ感じられなくなりました。

この抜け殻状態からしばらく経った後、日本に行くことになっていたのが幸いでした。実家で大掃除やら草むしりやら両親ができないことを手伝い、旧友に会ったり、大学院の試験を受けたりして、少し気持ちの切り替えができました。
とはいえ、家に帰ってくると、やっぱり何したらいいんだろう…という状態が続きました。これまで見たかったドラマや映画を見ても面白くないし、なんだか虚しい…。走りに行ってもなんだか楽しくない…。ない時間を見つけて走りに行くから楽しかったのか⁉︎何か新しいことを始めようかなぁと思っても、肩と手首を慢性的に痛めているので、テニスのようなスポーツを始めることも不可能、痺れが出るので陶芸や編み物、太鼓やピアノなど手を使うものも無理、これまで好きだったクラフトやカードづくりもはさみをうまく使えなくなってしまったのでできない。こんな身体状態の今の自分に一体何ができるのか?肩や手の調子が悪くて仕事だっていつまで続けられるかもわからない状態だし、ないないづくしで、結構ネガティブに過ごしていました。
そこで、今まで「時間ない!」とイライラしながらしていた玄関先や裏庭の掃除を心を込めて丁寧にし、息子ではなく、夫の好きな料理を作ったり新しい料理に挑戦したりしました。そうすると、いつもピリピリしていた夫の態度も少しずつ変わってきました。そして、週末に何年振り!?というくらい久しぶりに、二人で遠くまでドライブに行きました。
私、山や海など自然を見に行くのは好きなのですが、腕の痺れがひどくて長時間の運転がもうできないんです。調べるだけ調べて、ここ行きたいなー、でも遠いな…やっぱり一人で運転していくには無理か…と思っていた場所がいくつかあったので、いつも自分の趣味が第一優先で週末忙しくしている夫から「週末どこかでかけない?」と言われて、ちょっと遠いけれどその場所の一つをリクエストしてみました。二人ででかけることなんて何年もしていなかったので、最初は会話もぎこちないんですけどね。これから一人ではできないことも増えていくのだから、こうやって夫婦二人で助け合って楽しく過ごしていくのが一番なんだなと、交代で運転しながら思いました(写真は行った先の風景です)。

大学院に合格したので、もうすぐ勉強も始まります。なんだか何に対してもやる気が出なかったこの1ヶ月。気力がなくなっていたので勉強もできるのか不安でしたが、少し前を向けるようになってきました。空の巣症候群って侮れませんね。



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