見出し画像

いつまでも末永く


仕事中、ひとりのおばあさんに声をかけられた。

つかぬことをお聞きしますが…
こちらはお願いすれば今作ってくれるのかな?

尋ねられたそれはついさっき作ったばかりの作りたて。今出てるのは全部作りたてですよ〜とご案内し、おばあさんの次の一言を待った。


話を聞くと、どうやら今日はおじいさんの93歳のお誕生日だそう。おじいさんのお誕生日をお祝いするために買い物に来てくれていたのだ。

カゴにはおじいさんと食べるであろうケーキやご馳走がずらり。

それだけで微笑ましいのに次のおばあさんの一言が胸に響いた。

責任を押し付けるようで申し訳ないけど、あなたがもし娘ならどれを選ぶ?目がほとんど見えなくて私は違いがわからないからさ。
それに、おじいさんと一緒にお祝いできるのは最後かもしれないから。


どうやらおばあさんは目がほとんど見えず、1人で出歩かないようにと言われているそう。
そんなハンデがありながらも長年連れ添ったであろうおじいさんをお祝いするために、"2人で"お祝いするために1人で頑張って買い物に来た、その愛の大きさに私は胸がいっぱいになった。


私なりにお祝いにふさわしいものを選び、「帰り道気をつけて、素敵なお誕生日にしてくださいね」とおばあさんを見送った。

そして、"どうかいつまでもお元気で。来年もまた2人でお誕生日お祝いしてくださいね、その時はまた私が選びますからね" と心の中で願った。


きっとハンデはありながらも元気で素敵なご夫婦なんだろう。
私も歳を重ねてもお互いを支え合って生きていくような人と家庭を持ちたいなと思った。
そして自分の両親にもおばあさんおじいさんのように長生きしてお互いの誕生日をお祝いして欲しいと願った。


仕事中の些細な出来事が、noteに書き留めておきたい素敵な出来事であり、心に留めておきたい感情となった。
おばあさん、また会いましょうね!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?