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手の温かさ


「手あて」って言うように、体の痛いところや不調のあるところに手を当てる行為は、いつの時代の人にも通じています。

私が鍼灸の良いなと思うことのひとつに、この普遍的なところがあります。
いつの時代も、どこに住んでいても具合が悪い部分に手を当てて人は痛みを癒してきたんだろうなぁと思いながらお客さまに触れてます。

そもそも、私が鍼灸に出会ったきっかけは、30代の頃。不定愁訴でいつも体調が悪くて悩んでいたところ、病院の検査では数値に異常が出ないから「異常ないですね。気のせいでしょう」と言われて何もしてもらえなかったのです。さすがに毎日辛くなってきたので「鍼灸って効くのかな」と思って施術を受けてみたんです。

その時の鍼の先生が、施術に入る前に丁寧に私の訴える話を聞いてくれてから、鍼を打つ前に私の背中に手を当てるなり、「こんなに背中の筋肉が凝って固まっていたら辛かったね。良く頑張っているね」と声をかけてくれたんです。

その時に「私の辛さが気のせいじゃなかった」と思って、同時に体中から緊張が抜けてホッとしたんです。

そして、「病院の先生は手を当ててくれなかったけど、こうして手を当てて触れてくれる医療があるんだ。」と嬉しかったんです。

触れて、痛みに寄り添ってくれたことが心にも響いて、鍼の先生の手に気持ちが癒される実体験があって、私はこのあと鍼灸師の道に進みました。

鍼灸は、お客さまの肌に直接触れて鍼やお灸を施術します。
鍼灸施術の技法はいろいろあるけど、真っ先にすることは、辛い症状のある箇所に手を当てて触れることです。

肌に直接触れる手は、温かい方が良いですよね。冷たい手だと緊張させてしまうから。それに、温かい手は触れられていて心地よいものです。

そもそも人の体には治る機能が備わっているけど、自分以外の人の手が後押ししてくれることでその機能が発揮出来ると思うのです。

相手の治癒能力を助ける「手当て」。大事です。

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