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語彙日記 12/28〜29 喙を容れる

12/28(水)

詩人・茨木のり子さんは「草」の字がつくものはなんでも好きらしく、『草』という詩には、ひたすら草言葉が列挙されている。まずはそこから新しく知った言葉を三つ。

・草創(そうそう)
新しく物事を始めること。また、物事の始まり。
神社・寺院などを初めて建てること。

茨木のり子「倚かからず」

草創期という言葉でよく使われるそう。何もない地面から草が生えてくるイメージなのかな。

・草臥れる(くたびれる)
くたくたに疲れて元気がなくなる。
長く使って、みすぼらしくなる。

茨木のり子「倚かからず」

くたびれて草に臥す。わかりやすい。

・草木成仏(そうもくじょうぶつ)
心をもたない草木でも、仏性を具えていて成仏するということ。

茨木のり子「倚かからず」

BLEACHの完現術(物質に宿った魂を引き出し、使役する能力)を彷彿とさせた。

・内蒙古(ないもうこ)
モンゴル高原東部、ゴビ砂漠以南の地域。

茨木のり子「倚かからず」

「蒙古斑(Mongolian Spot)」ってモンゴル人や日本人といった黄色人種での発現率が高いから、モンゴルを意味する蒙古という言葉が使われているそう。白人にとってはあまり馴染みがないため、幼児虐待によってできた青あざと勘違いされやすいらしい。

・韜晦(とうかい)
自分の才能・地位などを隠し、くらますこと。
また、姿を隠すこと。行くえをくらますこと。

茨木のり子「倚かからず」

いつも「悔やむ」とか「後悔する」みたいな意味と勘違いする。「韜」は「剣や弓を入れる袋」を指し、「かくす」「おさめる」という意味。 「晦」は「大晦日(おおみそか)」でよく使われるけど、「光がなく暗いこと」を意味する。

・折衝(せっしょう)
利害の一致しない相手と、問題の解決に向けて、話し合いなどの手段によって駆け引きすること。

太宰治「もの思う葦」

「利害の一致しない相手」というところがミソ。敵の衝いてくる矛先を折ることが原義で、中国の古典である「晏子春秋」から生まれた故事成語。

・あばらや
荒れて(粗末で)すきまだらけの家。
粗末な家の意で、自分の家をへりくだってもいう。

太宰治「もの思う葦」

寒さにすこぶる弱いため、あばらやでは冬を越せる気がしない。

・畢生(ひっせい)
生を終える時までの間。終生。一生。

太宰治「もの思う葦」

「畢」は終えるや終わるといった意味。「つまり。結局」という意味で使われる「畢竟」という言葉もよく見かける。

・快哉(かいさい)を叫ぶ
心が晴れやかになって思わず声が出る。

太宰治「もの思う葦」

快(こころよき)哉(かな)。

・雄渾(ゆうこん)
雄大で勢いのよいこと。書画・詩文などがよどみなく堂々としていること。

太宰治「もの思う葦」

・十年一日(じゅうねんいちじつ)
長い間たっているにもかかわらず、何も変わっていないこと。同じ状態がずっと続いて、進歩や発展がないさま。

太宰治「もの思う葦」

大学院での研究生活はこれで精神を病む。日進月歩で行きたい。

・寸鉄(すんてつ)人を刺す
短く鋭いことばで人の急所をつくことのたとえ。

太宰治「もの思う葦」

川端康成に対して「刺す。」と書いた太宰の随想集で、「刺す」のつくこの言葉を学ぶのがなんか面白い。

・日本浪曼派
1930年代後半に、保田與重郎らを中心とする近代批判と古代賛歌を支柱として「日本の伝統への回帰」を提唱した文学思想。

太宰治「もの思う葦」

白樺派とか自然主義だとか、ああいう文学の流派?派閥?が本当にわからない。高校の頃の文学史のテストはボロボロだった記憶がある。当時は文学に対して一切の興味がなかった。

・引かれ者の小唄
負け惜しみで強がりを言うこと。

太宰治「もの思う葦」

12/29(木)

・蟲すだく
虫が集まることだが、後に誤用され、虫が鳴くことに使っている。秋の季語。

間村俊一「本の話」
河出書房新社「スピン / spin」第2号

「すだく」は「集く」。虫が密集しているところを想像すると、風流さもクソもない気がする。

・うそ寒
秋半ばから晩秋にかけての、うすら寒い感じのこと。秋の季語。

間村俊一「本の話」
河出書房新社「スピン / spin」第2号

「うそ」は「薄」を意味する。

・花布(はなぎれ)
本製本の中身の背の上下両端に貼り付けた布。

間村俊一「本の話」
河出書房新社「スピン / spin」第2号

意識したことのなかった本の部位。世界の粒度が一段階細かくなった。

・ZINE(ジン)
個人の趣味で作る雑誌

ワクサカソウヘイ「紙の話」
河出書房新社「スピン / spin」第2号

最初ザインってなんだと思ったら、magazineのzineだった。調べてみるとすごく魅力的な概念で自分も作ってみたくなった。趣味で撮ってきたフィルム写真に短歌や詩なんかを添えたZINEなんかが良さそう。想像が膨らむ。

・容喙(ようかい)
口出し。干渉。

太宰治「もの思う葦」

喙(くちばし)を容れるというイメージですごく覚えやすくなった。

・三拝九拝(さんぱいきゅうはい)
何度も頭を下げること。何度も頭を下げて敬意や謝意を表すこと。また、手紙の末尾に記して敬意を表す語。

太宰治「もの思う葦」

そのままの意味。すごい頭を下げているのがわかる。いつ使うんだと思って太宰以外の例文を調べていると、「三拝九拝して金を借りる」という例文を見つけて吹いた。

・人物月旦(じんぶつげったん)
いろいろの人物を取り上げ、批評したり品定めしたりすること。 人物評。 とくに著名な人物についての論評。

太宰治「もの思う葦」

「月旦」は毎月のはじめの日のこと。後漢の許劭が毎月のはじめの日に人を批評したものを発表していたという故事から。


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