【まとめ編】データドリブンな経営と財務を学ぶということ
ゲスト来歴
中島恒久
Fujisoft America CFO兼CEO
1978年生まれ。日本に生まれ育って、25歳でアメリカに移住、帰化。サンフランシスコ在住の日系一世。ベース弾き。
中村マコト
株式会社SUNABACO代表取締役
シリアルアントレプレナー/アクセラレーター/UXデザイナー。テクノロジストとして数々のスマートシティ、シビックテックなど先進プロジェクトをリード。日本最大級のプログラミングスクールSUNABACO代表として、リカレント教育、次世代の教育に関わる。
幅広い専門領域と確かな知識でファクトに基づいたコンサルティングで、多くの企業や自治体の課題を解決する。
今でこそ米国大企業の最高財務責任者兼最高執行責任者を勤める中島恒久さん(以下、ツネさん)だが、ここに至るまでの道のりは非常に険しく、長い道のりだった。
プロのジャズベーシストとして国内で活動をしていたが、2004年、抽選で永住権を得たことをきっかけに、25歳でジャズの本場アメリカに移住。当初は音楽活動のみでは生計が立たず、寿司屋の下働きをしていた。
このままではアメリカの社会の中で浮き上がれない。そう感じ起業を決意。しかし商売に不慣れでうまくいかず、2年ほどで逃避行した。その後スタートアップに参加するも突然の解雇。異国の地でホームレスになったことで、命の危機を感じ就職を決意するが、どこからも相手にされなかった。
ギリギリで拾われた会社の営業職で、雇用環境に精神をすり減らしながらも、ようやくホームレスから脱出。その経験でスキルと自信をつけ、福利厚生の良い大きな会社の事務員になることができた。
ツネさんは今、実際に経営をしていて、嫌いだった財務が好きになったそうだ。今やそれが会社や人生においても武器になっているという。
会計をまず勉強して、その後に財務を勉強することによって力をつけたそうだ。
財務と会計
「財務」と「会計」
これらは日本の社会一般では、同じ意味に誤解されやすい。
財務とは
会社の仕事というのは、投資家に投資してもらう、もしくは銀行からお金を借り入れ、それを元手に商品の仕入れや人の雇用を行う。この商品に自社の価値を付加して販売することで、利益を得るのだ。
この利益で借入先には利子をつけて返す。そして、出資者に対して、企業価値を上げて株価を上げることによって返す。
つまり、資金調達して事業を行い、利益を出すことで借入先には返済し、出資者にはリターンを行うのがビジネスの基本。
この一連のお金の流れが財務である。
会計とは
財務に対して、財務会計という言葉がある。借入先や出資者に、会社経営状態を説明するための会計が財務会計だ。そのために作成するのが財務諸表。
これが世間一般では会計と言われている。
財務と会計の違い
会計は、会社の経営状態の現状を表す。
財務とは、会計を踏まえて、未来の収入や利益を予測し、借り入れをしても返済能力があることをデータで示して借り入れをすることにより、成長の可能性がある事業を拡大することができ、さらに利益が生まれることを伝え、銀行や投資家から調達するという、未来に向かう一連のお金の流れのこと。
会計は、利益という言葉を使うが、財務(ファイナンス)で使われる言葉ははキャッシュ(現金)。つまり、未来に向けてどれだけ現金をきちんと積み上げられるかである。
会計は過去の実績に対してどう仕分けるか。
財務は実際手元にあるキャッシュの動きを重視する。
お金の価値
将来の入ってくるお金は、現在のお金とは同じ価値ではないというのがファイナンスの基本だ。
例えば今100万円を借り、金利が5%だとすれば、この100万円で年利10%のビジネスをすれば、実質的に金利は無いも同然。
しかし、この100万円を貯めるのに5年かかり、貯めてからビジネスをしようと思えば、5年後にはそのビジネスチャンスが無くなる可能性がある。
日本人は幼少期から親に借金はいけないものだと教わることが多い。
しかし、ビジネスをする上では、目の前にあるビジネスチャンスが何より大事なのだ。
ビジネスに成功する確率と、返ってくるリターン、そして借金の金利を計算したとき、金利より成功するリターンの方が大きいのであれば、その借金はすべきだというのが、ファイナンスである。
皆さんは、お金の価値は目減りすると知っているだろうか。
日本政府がインフレ目標3%と掲げるのをよく目にするが、これは「お金の価値が3%下がるのを目標にする」ということ。すると、今現在の100万円は1年後には97万円の価値になる。貯金すると目減りするのだ。
基本的にお金は寝かしたら、腐っていく。よって、循環させていく方がいい。
データドリブンな経営と財務
「データドリブンな経営と財務」という今回のトークイベントにおいて、意図的に財務についてのボリュームを厚くしている。
必要なお金を必要なタイミングで用意できれば、成功の可否は分からずとも挑戦することが可能になる。
挑戦しなければ何も変わらない。変化の激しいこの時代に、変化しないことは逆にリスクとなる。そこにお金があることで、挑戦する機会が生まれるのだ。
では、そのお金は誰がどう出すものなのか?
借り入れをする、投資を受ける、どちらにせよ、相手に対して「この人にならお金を出してもいい、貸してもいい」と思わせる必要があるのだ。そのためにはデータの根拠が重要となる。
SUNABACOでは現在「DX人材育成講座」を開講している。その講座の受講生からは「会社で新しいことをやろうとしたときに会社の同意をなかなか得られずに、新しいことにチャレンジできません」という悩みが多く寄せられている。皆さんの職場ではどうだろうか?
この問題を解決する方法として、仮に一社員でも、取り組みが生む利益、必要な開発コスト、会社にもたらす有益性などについて、財務的資料まで落とし込む。これによって会社や上司を説得できる確率が格段に上がる。
多くの会社員はアイディアを出し、マーケット調査までは行うが、財務知識がないために会社を説得できないことが多いのだ。
これはSUNABACOが各種講座でお伝えする、感情や経験でなく、データや調査をもとに判断するデータドリブンというものだ。
メリット・デメリットのみを伝えてプロジェクトを企画するのではなく、きちんと数値化しなければならない。
もし自分の所属する会社が上場しているのであれば、財政状況は会計報告や有価証券報告書を見れば把握することができる。上場していないのであれば、依頼して見せてもらう必要がある。
上層部は何を持って社員からの提案について判断するのかと考えれば、まず懐具合から始まるのは必然である。
加えて、どの会社でもその年の戦略や方針があるはずだ。
その取り組みが方針に合致しているか。バジェットが予算内か。本当に会社でやる意味があるのかという順番で確認していく。
会社で出世をしたい、独立して経営者としてお金を持ちたいとという思いがあるのであれば、会計と財務は知っておくことがマストだろう。
日本では、起業や経営のセミナーでも会計までしか教わることはできないという。
身近な財務の考え方
消費者と生産者、という考え方がある。
人は絶対に消費者の側面と生産者の側面を両方持っているという話だ。
例えばメーカー勤務者は仕事では生産者だが、スーパーマーケットに買い物に行けば消費者である。
仕事をしている際、今自分がどちらのマインドで仕事をしているか自覚的に問いかけるといい。
消費者のマインドであれば、自分が企画を上司に持っていき、上司に跳ね除けられれば、そこで終わってしまう。
それでは「買い物に行ったのに、自分が欲しいものが買えなかった。」と帰るのと変わらない。
基本的に経営者は生産者である。物を仕入れ、付加価値つけて売り、事業を拡大させる。これは生産のようなものだ。
この経営の感覚を一般のスタッフでも持つ必要がある。会社の資産を借り、価値をつけ、世に出し、対価の利益分を返すのか再投資するか。この流れを自分で行う自覚があれば、普段の仕事の話し方にも出る。その流れに準じた資料を作ることや、プレゼンが必要だと分かる。
よって、考え方を切り替えられるかはかなり大きなポイントなのだ。
日常生活において、必要で買っているのか浪費として買っているのか、その観点を持つだけで、おそらく人生は全く違ってくる。
投資なのか浪費なのか、そういう考えを持つことが財務の基本だ。これで何をどれだけ生み出せるか考えることが有効である。
相手が銀行であれば、銀行が理解できる言い方でお金を出したくなるような話でなければいけない。
相手が自分の上司であれば、その上司が納得してお前に任せてみるよって言われる話の持っていき方をしなくてはいけない。
何かを実現しようと思えば、資産家以外は誰かからその資金を調達する必要がある。
組織の中にいようと外にいようとこれが財務の根本にある基本。よって、この感覚が絶対に必要なのだ。
会計や財務の入り口
ツネさんは過去、会社を経営するのが嫌だと思っていたが、現在は面白いのだという。
値段の付け方が分からず、自信がないので安くしてしまい高く出せない。
何年か経つ内に、会社にとっての適正な金額や、どう変えればうまく会社を回せるか分かってくるようになるそうだ。
会計や財務によるキャリア
現在、最高財務責任者兼最高執行責任者を務めるツネさんは、最初からこのポジションだったわけでは無く、事務のマネージャーとして入社したそうだ。
帳簿を付ける内に徐々に自分で営業するようになった。会社の規模がまだそこまで大きくなかったため、大体がトップ営業だったという。すると、経営上のお悩み相談のようになるそうだ。
ツネさんが会計に明るいことが分かると、相手の社長は財務諸表見せてくれてくれるのだという。
システムを生業とする人がシステムを作るのは当たり前。
専門分野ができることは当たり前であるため、パイを取り合い価格競争となる。価格競争は、大きな資本を持って相手にはどうやっても勝てない。
おわりに
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