そこまで言って委員会「ウイルス」編

2021年8月29日 YTV『そこまで言って委員会NP』より抜粋文字起こし

愉快な理系大集合「ウイルス」

1973年に発表された手塚治虫のブラックジャック。無免許の天才的外科医ブラックジャックを主人公とした医療漫画の金字塔で、その内容は医学的リアリティと漫画ならではの大胆なフィクションが混在している。第51話「縮む」は、動物の毛から空気感染し体が縮んでしまうという奇病が大流行をするアフリカが舞台。謎の感染症の原因と治療法を探すブラックジャックが、縮んでいく同僚医師を助けることができず、医師の存在意義について自問自答するラストカットは名シーンの一つに数えられる。

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https://tezukaosamu.net/special/bj/words.html より)

そうした中、現在世界中で急速に感染が拡大しているのが新型コロナウイルスの変異株であるデルタ株。7月、アメリカ疾病対策センターCDCは、デルタ株には水疱瘡並みの感染力があり、ワクチン接種を完了している人にも感染する可能性があるほか、従来のコロナウイルスよりも重症化する恐れがあるという内部文書を公表。その上でワクチン接種を済ませた人もマスク着用を再開すべきだと表明している。

一方、日本の東京大学研究チームは、日本でも7月に見つかった新型コロナウイルスの変異株、ラムダ株について特定の条件でデルタ株より感染力が強かった、と科学論文サイトBIOアーカイブにて報告している。

ラムダ株が流行中の南米では、ラムダ株によるワクチンブレークスルー型の感染ケースも相次いでいるという。ラムダ株をめぐっては、WHOがデルタ株より警戒度が低い段階の注目すべき変異株に分類しているが、専門家からは変更しなければならないとの指摘も上がっている。

果たして今後ワクチンが効かない変異株が発生する可能性はあるのか。さらに今月、アメリカ議会で新型コロナウイルスが中国武漢の研究所から流出したとする報告書が提出されたが、確固たる証拠はあるのか。

この後、当委員会でおなじみの京都大学ウイルス再生医科学研究所准教授の宮沢孝幸先生に、ウイルスに関する様々な謎や疑問についてお伺いしますが。

ちなみに宮沢先生はこうした状況において、今誰が「コロナをインフルエンザと同じ扱いにしましょう」と言い出すのか、それが課題だと思いますと語り、あくまで新型コロナウイルスの分類を2類相当から5類にすべきだと主張されていますが。

そこで皆さんに質問です。ウイルスついて疑問に思うことはなんですか。

(野村)はい、皆さんにウイルスについて疑問に思うことは何ですかと、お聞きしているんですが、改めましてこのコーナーのゲストは京都大学ウイルス再生医科学研究所准教授の宮沢孝幸さんです。どうぞよろしくお願いいたします。

(黒木)またウイルスの専門家としてここに立っていただいて…

(宮沢)もう出ないだろうと、呼ばれないだろうと思ってたんで。今日ね、ウイルスの楽しい話するって聞いたんだけど、なんかおどろおどろしい…

(黒木)VTRはね。でも、ウイルスってそもそも何なの、っていうところを中心に宮沢先生に伺っていきたいんですが、竹田さんは『ウイルスって馬鹿なの』は…

(竹田)そうそうそう。だからね普通ね、その植物でも動物でも虫でも寄生虫とかあるじゃないすか。それは自分たちが生き延びるための手段なわけですね。基本宿主を殺さないわけですよ。ところかウイルスって宿主を殺しまくるんですよね。そして自分たちも死ぬんですよ。もしかして馬鹿みたいな。

(須田)わかった、宮沢先生不機嫌になっちゃうの。

(宮沢)それは事実誤認です。ほとんどのウルスは非病原性だと思います。病原性のあるウイルスってのはもうごくごくわずかだと思いますね。

(黒木)田嶋先生の疑問もね。

(田嶋)私はだから人を殺すウイルスと、それからそうでないウイルスと、その比はどのくらいの数なの…

(宮沢)まあ限りなく殺さないっていうか、共存してるウイルスの方が多いでしょうね。このウイルスっていうのは、もともと病原性細菌の方ですね、細菌の方から研究が派生してきて、ろ過をしてもですね、伝達される病原体として発見されたので、研究されてきたのが、病気を起こすもののみがね、研究されてきたんですけども、僕らが学生だった頃から善玉菌とかいうのが話が出てきて、ずいぶん研究進みました。で、ウイルスもそういう研究がおそらく進んでくると思っていますけども、絶対善玉ウイルスもいます。

(大野)聞きたいんですが、そういった単に人間の医学としてね、研究する対象というのは、今までなされてきたと思うんですけれども、その生命全体としてそのウイルスとは何かウイルスの世界観というかそういったものをその包括的な研究というのはすごい進んでいるんでしょうか。

(宮沢)いやあ、進んであんまりないですね。これは僕が大阪大学にいた頃、2001年の頃からずっと思っていて、なるべくそういうのをね一つでも多く発見して、で、世の中に知らせていきたいと思って。当時はね、私が10年頑張ればブームになるかなと思ったんですけど、ブームにならずに私はもうあの研究者席も私もアラカンですのでね、役に立つウイルスっていうのもね、絶対将来的にはね、大きなブームになるはずだし、もちろん病原性ウイルスと戦うウイルスもあるはずなんですよね。今回のね、新型コロナウイルスもコウモリおいては非病原性なんですけども、もしかしたら有用ウイルスである可能性は僕は否定できないと思っていて。それがたまたま人とかに来ちゃって、それもだんだんだんだん歴史を長くとってみれば非病原性に近づいていくはずです。あのウイルスは殺すようなものはだんだんだんだん淘汰されていくはずです。

(黒木)あの今まで様々なウイルスが動物から人に移ってきたと思うんですけれども、その動物にとっては大丈夫だったけれども人にとって有害だったと…

(宮沢)その通りです。人の新興ウイルス感染症の多くは動物から来てます。私はほとんど全てだと思っていますが、そのもともとの動物では病原性がないのが多いですね。だからこそ、私はあのあのすいません、ここに今日ここに今日、本持ってきてますけど。中に書いてますけども、非病原性ウイルスを研究することも非常に大事だと思ってます。

(黒木)いや今新型コロナウイルスの話が出てきましたので、先ほどご出席いただいた五箇さんにもご意見聞いてみたいと思います。後閑さん、あの今回この新型コロナウイルスが発生した理由というか、その生態系の研究をされている身からしたら、どういうふうに見ていらっしゃるんでしょうか?

(五箇)はい。私自身は専門あの環境省の研究所ということで、生物多様性の保全ですね。要は野生生物の世界といったものが今非常に人間活動によって劣化しているということに対して研究していたんですが、たまたま今回新型コロナウイルスという、こう言ったパンデミックに出会って、私自身の研究テーマの中に例えば寄生性のダニであったりとか、あるいはカエルツボカビといった両生類だけ感染する変な奇病といったものが今、実は世界的に急速にパンデミックして野生生物の世界でもこういった病原体の問題ってのは深刻になってるんですね。そういった研究をしている中で新型コロナというものに関わることになった中で、グローバルサプライチェーンという形で、ありとあらゆる国が経済ネットワークで繋がり、激しい人流と経済の交流というのがもう世界の隅々まで行き渡ってるので、本来この程度のウイルスならエンデミックで終わらせなきゃいけなかったものが、今、一帯一路経済政策を中心として経済発展してる中国を起点としたことで、あっという間にわずか2ヶ月で北半球から南半球まで、全地球的に広がってしまった。どっちかといったウイルスの感染力以上に、この行き過ぎたグローバル経済というものが生み出した人災であると言った方がいいだろうと。ちょっと笑い話になってしまいますけど、日本で唯一ギリギリ最後まで感染者ゼロだと岩手県だったと。誰が1号になるかという非常にストレスフルな時期を過ごしてる、その間にも、実はアマゾンの奥地のアマゾナス州にまでこのウイルスは侵攻してたということで、実際問題はそこまで資本主義経済というのが広がっていたということが象徴的で、ある意味逆に岩手県ってのは非常にその経済的に独立していたと。

(全員爆笑)

(黒木)コロナの変異株も本当にひとまとめにコロナとしていいのか。

(井上)日々いろんなところの中のラムダ株とかデルタ株とかいろんな型が出てきている中で、ひとまとめにコロナと言っていいのかっていうのはすごい疑問で、重症化しやすいものはまた別の名前としてちょっと危険視した方がいいんじゃないかなとか思っちゃいます。

(黒木)それどうですか宮沢先生。

(宮沢)あの、誠にいい質問なんですけども、デルタ株の中でも強毒のやつと、もう全然弱毒ってのも絶対あるはずで、実際に無症状の人はかなり多いだろうなと。それが同じデルタ株の中での違いなのか、それとも人の遺伝的なものそれから免疫学的なものの違いなのかちょっとよくわからないんですよ。

(竹田)それね、どんどん何とか株何とか株っていいますけど、でもどっかで落ち着いてインフルエンザの一つに落ち着くと…

(宮沢)あのー、炎上してしまうかもしれない、あの…

(黒木)どうぞ思い切ってどうぞ。

(宮沢)全体を見るとやっぱり僕は弱毒に向かってると思ってます。ただあの、もちろん強毒になってる人もいる。本当に多様なんですよ。

(黒木)しばらくまだまだちょっとコロナの、コロナの感染も続きそうなので、引き続きまた宮沢先生にご意見を……。

(野村)………果たしてください。

(宮沢)えっと新興感染症の出方についてここに書いてます。私も…

(黒木)もっともっとゆっくり見せてもらって…

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(宮沢)新興感染症の出現理由について13個だったかな、書いてますので、関心がある方はぜひお読みください。

(須田)その専門家みたいにね。

(黒木)宮沢先生ありがとうございました。さて、ここで番組から重大なお知らせがございます。

(野村)来週のそこまで言って委員会NPは、午後1時15分から3時までの15分拡大スペシャルでお送りいたします。

(黒木)いつもより番組スタートが15分早くなっていますので、皆様お見逃しなく。今日もありがとうございました。

(野村)ありがとうございました。

<終わり>

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